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第22話
「でも、顔赤いすよ?」
隣りに座る拓実が見つめてくる。
「バ、バカ!俺をからかうなよ」
「別に、からかってなんかないっすから」
拓実は、続けて真那人の顔をじっと見つめる。
「まんざらでもない……みたいな?」
真那人の真意を探るように、拓実は顔をより覗いてきた。
「また変なこと言うな!周防さんとは、ビジネスでの付き合いだって言ってんだろ……」
声を荒げてしまったことを少々恥じ、最後は声が萎んだ。
拓実にしたら、真那人は“まんざらでもない”ということを肯定したようなものだろう。
「じゃあ……俺が何とかしようかな……」
「は?」
「真那人さんに、幸せになって欲しいんで」
真那人には、拓実の言うことが分からなかった。
「なんだよ……」
「いえ、こっちのことっす。あ、そろそろ帰ろうかな」
拓実はソファーから立ち上がった。
「え、もう帰んのかよ。飯行こうかと思ってたのに」
「あぁ、すんません!また今度に」
真那人は少し寂しかったが、無理に引き止めようとはしなかった。
「そか。分かったよ」
「じゃ、おじゃましました!雑誌の撮影と創刊、楽しみにしてます!あ、美味しい紅茶ありがとうございました!」
拓実は笑顔を残して帰っていった。
拓実に「周防を好きなのか」と聞かれ、真那人は大いに動揺していた。
今までに感じたことのない、そわそわするような不思議な気分になった。そして、ふと周防の顔が思い浮かび、すぐにでも周防に会いたいと考えている自分に驚いた。
これが、恋なのだろうか。
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