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第24話
「撮影、順調に進んでて安心したわ」
真那人と周防は昼休憩でカフェを訪れた。
真那人も雑誌の編集チームの一員なので、雑誌の出来栄えを左右する撮影は大事な仕事だ。
真那人もただ撮影を見ていたわけじゃない。
モデルとして名を馳せた経験から、後輩モデルにアドバイスしたり、カメラマンと相談したりと、色々と忙しかった。
「そうだな。……なぁ」
「ん?」
「お前、やっぱモデルに戻りたいんじゃないか?」
そう聞かれて、コーヒーを啜っていた真那人は動きが止まった。
「え、何で?」
「さっきさ、懐かしそうに見てたから」
「見てたからってそうなるのか?」
内心を見透かされた様な気がして少し驚いたが、誤魔化すように笑った。
「まぁ、無理にとは言わないけれど、やってみるのもアリだと思うぞ」
「そうだな……」
『やりたいな』とは、やっぱり言えなかった。一度また戻ってしまえば、モデルの世界に残りたくなってしまうだろう。
今はファッション誌を手掛けているから、どうしてもモデルの世界を目の当たりにしてしまうけれど、もう、自分はKSグループの人間なのだから。戻ってはいけないのだ。
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