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第26話

 三人の中では最年少の拓実に連れてこられたのは、会場から歩いて五分ほどの場所にある隠れ家的なバーだった。 店には既に男女のカップルと男性が一人酒を飲んでいた。 カウンターは空いていたので、まずは周防が座り拓実に促されて隣に真那人が座った。拓実が席に着いたのは最後。 周防と拓実はウイスキーとワインをそれぞれ注文し、真那人はビールとパスタを頼んだ。   しばらく飲んで時間が経った後に、唐突に拓実が切り出す。 「そーいや、周防さんて好きな人とか恋人いるんすか?」 「ブフッ」  身をカウンターに乗り出すようにして拓実が聞いたので、真那人は飲んでいたビールを小さく噴き出してしまいゲホゲホと咳き込んだ。 「え、真那人さん大丈夫っすか?」 拓実も真那人が反応を示したことに慌てたようだ。 「だ、大丈夫だ」 真那人は次第に咳も収まったので、手で制しその場を収めた。 「え?うーん……恋人はいないけど、気になる人はいるかな」  真那人の反応を気にせずそう言って、周防は真那人を見つめてきた。目が合うと、何故か真那人は顔が赤くなってしまう。 そんなわけはないが、自分のことだと言われたような気がしたから。 けれど、もし気になる人というのが自分だったらと思うと、どうしたわけか胸が締め付けられるようにキュウと鳴った。 「えー、そうなんすか?それってどんな人なんすか?」 「そうだな……眩しいくらいに輝いていて、素敵だけど……やんちゃなところが可愛い人かな」  周防は至極真面目に答えた。

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