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第28話
バーに二人残されて、真那人は気まずさをますます感じた。
「全く、アイツ何考えてんだろうな」
辺りを見たら客は他にはいなく、二人きりになっていて気不味くなり真那人は笑った。
「拓実さ、お前が好きなんだろうな」
周防が何でもないように言うので、真那人は固まってしまった。
確かに、拓実に好きだと言われたが、今のやり取りだけで気付いたのだろうか。
「え?」
「俺にお前を勧めてるようでいてさ、俺がお前をどう思ってるか探り入れてただろ」
そんなこと、気付きもしなかった。思えば周防は、察しが良くいつも人を見ている気がする。
普段接していても、真那人がしようとしていたことを先回りしてやってくれることもあった。
悩みがあり、相談しようとしてメールをすると、電話をくれて気持ちのつかえが取れたことが嬉しかったことを覚えている。
拓実に関しても周防の言う通りなのだろうか。
なぜ真那人を周防に勧めたのだろう。
そうか、そういえば前に『俺に任せて』と言っていたような気がする。
あんなことを周防に言ったのも、先に帰ったのも、自分と周防をくっつけようとしてのことだったのだろうか。
周防は、気になる人がいると言っていたのに。
「はは。考えすぎじゃね?」
「そうかな……」
周防は何とも煮え切らない反応を見せた。
「なぁ、そろそろ俺たちもここ出ねぇ?」
「それじゃ、ウチに来るか?美味しいワインあるんだ」
「え、そうなの?飲みたい!」
「じゃ、決まりだな」
二人はバーを後にして周防のマンションに向かった。
もう遅いし、明日は仕事も休みなので泊まっていくことにもなった。
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