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第41話

十一年前のある日、真那人は街中で声を掛けられた。 「ちょっと、君」 「何だよ……」  その頃の真那人は、モデルを始めてからよりもずっと尖っていた。そんなことにも怯まず、男は続ける。 「君さ、モデルとか興味ある?」  実に胡散臭いと感じた。それだけは覚えている。 「モデル……?別に、興味ねぇな」  そのまま無視して去ろうと思ったが、男は「もし興味湧いたらここに連絡して。君、きっと輝けるから」そう言って名刺を真那人の手に握らせて立ち去った。 真那人は帰宅して名刺を破り捨てようかと思ったが、何故かその気になれず後日名刺に記載されている住所に出向いた。 その名刺を渡してきた相手こそ、今目の前にいる周防だった。  事務所を訪れて以降、真那人はその事務所に在籍することになり、以来モデルを辞めるまで世話になったのだ。 「あれが……周防さん?」  周防から詳細を聞いた真那人は、驚きすぎて思考が追い付かない。 「そうだよ。あの頃俺はスカウトではなかったんだけど、お前を見付けて目を奪われたんだ。きっと光るって。だから、声かけた」 「あの時声かけたヤツだって言ってくれりゃいいのに…」 「お前が活躍しているのを見てるだけでも十分だったし、お前は忘れてるかと思ったから…でも、お前がモデル辞めてしまって、おまけに妹と見合いしたなんて知って、驚いたよ」 「あぁ…悪かった。覚えてなくて…。ってか、そういや周防さんも良い家の坊ちゃんとか?」        見合いをした時は、相手の素性など全く興味がなかったから、周防という名字に気付かなかった。

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