47 / 71

第47話

「お前、今の部署から異動しろ」 「え?」 「仕事以外でも会っているんだろうが、接触回数も減らせるだろう」 「ちょっ……」  真那人が反論しようとしたら、父親は続けた。 「あぁ、そうだ。携帯電話持っていたら出せ」 「なぜ?」 「相手の連絡先を消すんだ。今ここでな」  真那人の顔はサーっと青ざめた。 「さぁ、早くしろ。私は忙しいんだ」  有無を言わさない威圧感に、従う他なかった。 真那人はズボンのポケットに入っていた携帯電話を取り出し、ほぼ自棄くそに操作した。 こんなに、人のことで泣きたくなったのは初めてだった。父親と、自分の出自や境遇が憎らしい。 「さぁ消しましたよ。これで、満足ですか」  目の前が真っ暗になる。壊れそうな心で、感情を押し殺した声で告げた。 ついこの前、周防と気持ちがやっと繋がったばかり。モデルをやれることも決まり気分も上向いていたのに……。 一気に奈落に突き落とされたようだ。 周防がいなければ、意味はない。 「そうか。男に現を抜かしてないで、将来を見据えろ。モデルの件も、取りやめてもいいんだぞ」 「ちょっ……それは約束じゃないですか!」  真那人は思わず声を荒げた。 「まぁ、お前の行動次第だな」 「え?」  今度は何を言われるのかと、身構えてしまう。 「明日から、お前に監視を付けることにする。下手に動くなよ。相手に会うことは当然許さん」  地べたに、膝から崩れ落ちそうになる。 周防に、会えなくなる…。 そのことが真那人に現実に重くのしかかってきた。 「なんで……そこまで……」  立っているのがやっとの状態で、体が打ち震える。 「こうでもせんと、お前が目を覚まさないからな。あぁ、家に来るか?そうすれば、私が監視できるな」 「好きにするって言ったじゃないですか!絶対に行きません!」  真那人は叫び、その場から走り去った。

ともだちにシェアしよう!