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第48話
会えない……もう、周防に会えないかもしれない。
それに、ショーに出られなくなるだろうか。
生きる楽しみも夢も、全て失ってしまった。
やっとの思いで心が1つになれたのに、これからという時に……。
もちろん仕事はこなす。父親に文句を言われたくないから。
けれど、何をしても無味乾燥に感じる。
周防のいない空虚さは、日に日に真那人の心を壊していく。
ほどなくして、2月の末頃から他部署に手伝いと称して行かされた。
行った先の者たちも、なぜこんな時期に来たのだという雰囲気を出していて、それは真那人も気付いていて凄く気まずかった。
そして新年度からは正式に“手伝い”に行っていた部署に異動を言い渡された。
そこは雑誌とは無関係で、もちろんモデルとの関わりもない。こうして、周防のことも忘れていくのだろうか。
いや、それどころか日を追う毎に会いたい気持ちは強さを増す。
他部署に行きだした時は仕事を1から覚えるのに精いっぱいだったけれど、慣れてきたら寂しさがどっと押し寄せる。
周防に会いに行きたい。職場だって家だって知っているから、会いに行こうと思えば行けるだろう。
それでも、監視の目があるしもし父親に知れたら大変になることは明白だ。
今は大人しくしておくのが賢明だろう。
今、真那人を支えるのは周防との思い出だ。出会ってから友達として過ごした数年間のこと、初めて肌を重ねた時のこと、想いが通じ合った日のこと。いつまでも鮮明に脳裏に蘇る。
ショーが開催される日も、刻一刻と近づいてきている。
もうこうなってしまっては、周防もショーも諦めるしかないだろうか。
周防が自分を好きだと言ってくれた。それがあれば十分だ。日に何度あの言葉を周防の声でリプレイしているか分からない。
日を追う毎に絶望感が真那人を侵食していく。
こんな日々が続くなら、生きていたくないとさえ思う。
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