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第50話

 どうやって過ごしたかも分からないままにゴールデンウィークが終わり、また仕事の毎日が始まる。  そんなある日、仕事を終えて帰宅すると、真那人の部屋の前に人影が見えた。  暗いので誰かは不明だが、普段から待ち伏せなどされることはないから、真那人は驚いた。  それでも、そのシルエットを見て声を聞かずとも分かった。 真那人を待ち構えていたのは、ずっと会いたくて仕方なかった人だった。 「周防さん…」  真那人はその場で一瞬固まった。 「お帰り、真那人」  数カ月振りに周防の声を聞き、いてもたってもいられなくなった真那人は周防のもとに駆け寄った。 「うわっ」  真那人が思いっきり抱きついたので、周防はややよろめいた。 「周防さん…周防さん…」  まるで子供のように泣きじゃくり、真那人は周防にしがみつく。 「おいおい。誰か来たらどうするんだ?」  そう言いながら、周防は優しく抱き返してくれる。 「別に、関係ねぇ」  周防がここにいるなら、それでいい。他など気にしない。 「会いたかったよ。真那人」  周防が頭を撫でてくれる手が心地良い。 「俺も…」  このまま時が止まったらどんなに良いだろう。誰にも邪魔されたくない。 でも… 「もしかしたら、今も監視されてるかも…」 「え、そうなのか?」  周防は驚いて真那人から身を離そうとした。 「うん…ったく、親父のやりそうなことだ」 「俺は、知られたって堂々としてるつもりだよ」  真っ直ぐに真那人を見つめて言う。周防の覚悟を見た気がした。 「周防さん…ありがと。取り敢えず、入ってくれ」  真那人は家に入るように促した。

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