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第51話
しんとした部屋の中で、2人でソファーに座ると真那人は尋ねた。
「今まで、どうしてた?」
「何とか生きてたって感じかな。どうして、突然連絡を断った?」
今度は周防に問われる。
もしかしたら、察しの良い周防なら感付いているかもしれない。
「親父に、俺たちのこと反対されて、連絡先消されたんだ。逆らえなかった」
「やっぱりな。そうじゃないかと思った。お前の意思じゃないだろうってことは、分かってた」
「ほんとゴメン。会いに行きたかったけど、監視付けるって言われてさ、身動きできなかったんだ」
この数カ月を思い出すと、心が千切れそうだ。もう、あんな日々はごめんだ。
「何かあったんだろうってことは想像が付いたし。俺も、しばらくは静かにしといた方がいいだろうと思ってたよ。もちろん、めっちゃくちゃ心配したけど」
「そっか……」
周防は、お見通しだったということか。やはり、周防には敵わない。
「お前のことは、拓実に聞いていたよ。寂しかった」
「え?俺もなんだけど」
真那人が言い終わるなり、周防が抱きしめてきた。先程よりも強く。
「俺たち、ここんとこ同じ思いでいたんだな」
「うん…そろそろ、俺もどうにかして動こうって考えてたんだ。周防さんが先に、来てくれるなんて…思わなかった」
真那人も周防の背中に手を回し、抱き返した。
「我慢ができなかったよ。お前がいないなんて、生きてる意味がないから」
「俺もだ……」
二人はどちらからともなく、キスをした。一体、どれくらいぶりだろうか。お互いの存在を確かめるような、そんなキスだった。
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