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第52話
「こうして会えたのはいいけれど、ただではいられないかもな」
周防がポツリと言う。
「え?」
「まだまだ壁は立ちはだかるだろうってことだよ。お前の親父さんに許されたわけじゃないし」
「家のしがらみ、面倒だな……」
真那人はボヤいた。
大会社の家に生まれると、世間の目も重要になり、素行なども気を付けなければいけなくなるのが常。
「そうだな。でも、うちの父親は前々からKSグループと提携したいって言っていたし、それで妹とお前を見合いさせたんだ」
「え、そうだったの?」
「あぁ。父親は世間体に寛容なのかどうか知らないけれど、お前と一緒にやっていきたいって言ったら、許してくれるかもしれない」
そうなったらどんなに良いだろうと真那人も思うが、あの父親が聞くかどうかは分からない。
「そうなればいいけどなぁ…親父頑固だから許さねぇかもな」
「言ってみなきゃ分からないだろ?今度挨拶に行こう」
「で、でも……」
怒り顔の父親の顔が脳裏に浮かんでくる。きっと、自分と周防の話など聞く耳も持たないのではないか。
「大丈夫。俺が付いてるから」
周防は真那人の額に口づけを落とした。
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