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第54話

「で、今日は何の御用でしょう」  周防が外部の人間だからそれなりの話し方はしているものの、父親は周防を探るような目で見つめている。 何の話でやって来たのかは、薄々感付いているのかもしれない。 「はい。今日はご報告とお願いがあり、まいりました」 「ほう。それは一体何でしょうか?」 「私は、真那人さんと交際させていただいています。そこで、2人のことを認めていただきたいと思っています」 「……交際、ですか……」  父親は、あからさまに不快な顔をして眉間にシワを寄せた。 「そうです。この先もずっと、真那人さんと共に生きていきたいと考えています。どうか、認めていただけないでしょうか」  すると父親は、困り果てたように眉間に指を当てた。 「そろそろ来るだろうと思っていましたよ。こうなることは、予想していた」 「え?」  真那人と周防は、どちらも同じ反応を見せた。 つまり、父親は我慢できなくなった2人がどうにかして会い、こうして談判に来ることを見越していたということか。 「そんな一時の気の迷いならば、早く止めた方が身のためですよ。うちのと恋だのなんだのとやっていても、あなたのためにならない」 「父さん!俺はそんな!」  思わず食ってかかろうとした真那人を、周防が手で制した。

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