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第55話

「私たちは軽い気持ちというわけではありません。真剣に、これからを一緒に生きていくつもりでいます」 「真剣に、ねぇ」 「はい。私の人生には真那人さんが必要です」 「鳳来さんのご子息であれば、ご自身の立場はお分かりのことと思いますが、後々どうするのですか?あなたもグループを継がなければいけないのでは?」 「うちの父は、かねてからKSグループさんと手を組みたい、一緒にやっていきたいと話していました。将来的には、私としてもKSグループさんに入る形で合併しても良いと考えているくらいです」 「鳳来さんが?そ、それは有難いが……」 「真那人さんの結婚を心配されているのかもしれませんが、その点についてはご期待通りにはいかないでしょう。けれど、いずれは2人で手を取り合ってやっていけたらと思っています」 「俺も、結婚はさ、しようと思えばできないわけじゃないかもしれません。でも、やっぱり相手に悪いしできません。父さんには本当に申し訳ないけれど…周防さんがいなきゃダメだから……」  確かに、ゲイであることへの父親への負い目はあるし、申し訳なさは大きい。それでも仕方がない。自分は周防と出会い、好きになった。この先の人生は周防と歩いていくと、決めたのだ。 「まぁ、真那人が結婚をして、そのまた次の跡取りを設けてくれることを思い描いていたが、それは私の単なる理想であり、望みだった」 「父さん?」 「会社を継ぐのは、自分の血筋でなければいけないと長らく考えていたが、私もそのうちいなくなる。未来は、お前たちに任せるしかないかな……」 「え、どういうことですか?」  思いがけない言葉をかけられて、思わず真那人は聞き返してしまった。

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