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第59話

リハーサルではまぁまぁの歩きができたと思う。ステージに立ってみると、大丈夫だろうかという不安な思いは消し飛び、高揚感が勝った。またここに立てることが、素直に嬉しい。  真那人が着ているのは、普段よりも高めのブランドスーツ。スマートなシルエットで、細身の真那人にはぴったりだ。 そして靴は、一流ブランドのものを選んだ。自分を良い方向に導いてくれそうな気がするから。その他にも、知的さを上げるためにメガネもかけた。 黒髪のマッシュヘアにビシっとスーツで決めた真那人は、ギラギラしていた昔に比べて落ち着いたが、まだまだオーラは失っていない。 午後7時、ショーはスタートした。1万人を収容できる会場は、若い女性を中心に埋まり、大きな歓声に包まれた。オープニングアクトの後に大音量のダンス音楽と共に登場したのは拓実だ。 彼は一八三センチという恵まれた体躯を持っていて、細身のスタイルが人気だ。そして小顔で目力があり、人の心を射抜くような視線も魅力である。  そんな拓実の今日のスタイルは、実にシンプル。トップスは何の変哲もない黒いTシャツに、スキニータイプのグレーのパンツをボトムに持ってきた。足元はハードなミリタリー系の編み上げブーツを合わせている。存在だけで魅力的な男は、例えシンプルなスタイルでも輝くものだ。  人気抜群の拓実が初っ端から出てくると、一気に会場のテンションも上昇した。  拓実がランウェイを進んでいくと、きゃあきゃあと女の子の黄色い悲鳴のような声がそこかしこから上がる。  真那人の弟分的な存在であっても、こういう場では度胸があるところを示し、普段とはまた違った姿を見せた。 『アイツ……なかなかやるな』  控室でモニター越しにショーを見ていた真那人も、いつもとの違いに驚かされた。

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