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第60話
ステージは進行していき、半分くらいが終わった頃に、真那人もステージ裏へと移動を開始する。
廊下を歩いていると、ステージから拓実が戻ってきた。
「あ、真那人さん!」
真那人がいるのに気付くと、いつもの屈託のない笑顔を見せた。
これがステージ本番となると表情も変わるのだから恐れ入る。やはり、拓実もプロだということだ。
「おぉ。お疲れさん」
「俺の、ちゃんと見てくれてました?」
「当たり前だろ?でもお前、ここまでシンプルな恰好で出るなんて思わなかったわ」
「でしょ?でもこれ、敢えてなんすよ。服は普通でも俺が着れば見違えるってね」
自信満々に言うものだから、真那人もつい吹いてしまった。
「そうだな。地味なくらいの恰好なのにオーラ出まくってたよ」
「やっぱり?良かった~それ狙ってたんすもん!」
「お前もなかなかの大物になったな」
拓実の頭をポンと軽く叩いた。
「まだまだっすけどね。真那人さんに言ってもらえて嬉しいっすよ」
その言葉に、真那人はふっと微笑んだ。そして何となく自分のことを好きだと言ってくれた拓実の言葉を思い出した。
「もうとっくに、俺なんか超えてるよ、お前は。さ、俺もそろそろ行かなきゃな」
そうだ。本番が控えているからのんびりしている暇はない。
「あ、俺も真那人さんのステージ見てますから!」
コクンと頷いて答えた。
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