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第62話

ショーが終了し衣装も片付け終えた頃に、人が訪ねて来た。  「真那人、お疲れ様」  真那人は母親に今回のことを教えていて、招待していたのだ。 「ありがとう、母さん」 「素敵だったわよ。あなた、スーツも似合うのね」 「そう?嬉しいよ。最近さ、スーツばっかなんだ。”今”の俺を見て欲しくてスーツにしたんだよ」 「お父さんのところで、頑張ってるのね」 「まぁ、な。まだまだこれからだし、俺なんかがマジで継げんのかなと思うけどな」  真那人は自嘲した。 「何言ってるの。あなたは大丈夫。決意して逢沢家に入ったんでしょ?やり抜きなさい」 「うん。そうだな。またステージに立てたし、これで、悔いなく会社のために尽くせるかな」  そう言って、真那人は母親を周りの目も気にせず抱きしめた。 昔から綺麗だった母だが、今は少し疲れているように感じられた。これからは、母親のことももっと大事にしなければと思った。 「母さんも、元気でな」 「えぇ」  笑顔で握手を交わした母親の手は温かい。

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