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第4話 変化【木ノ下と眞那斗】

それから、診察室らしき場所へ移動して、問診をした。狐時代からあんまり病院へ行ったことがなかったので、医者というものにあまり接したことが無い。末野原先生は、とても頭が良さそうな印象を受けた。 舌や、目、耳、心拍音、手足を丁寧に看てくれる。痛かったけれど、血も取った。全て末野原先生が自らやってくれた。 「血液検査の結果は1週間後になります。詳しいデータから診断した方がいいんだけど、君の場合、早く伝えなければいけないと判断しました」 末野原先生はゆっくりと前置きをした。 俺もゆっくりと頷く。 「狛崎君は発情期に入ってます」 「!!!!!!!!!」 「その顔だと初めてかな?」 こくこくと首を縦に振った。 「説明すると、体温と心拍数の上昇、目も充血してます。狐特有の発情期の匂いが少し。あと、性器も熱かったりしますか?」 俺は咄嗟に股間を押さえる。彼は何故それが分かるのか。 「あ、はい……」 「目眩は身体が驚いたからだと思われます。病気ではないのでね、安心してください」 『安心』って言われても困る。全く安心できない。初めてで分からないことだらけじゃないか。 「通常、狐は冬に発情期を迎えます。狛崎君は半分以上人間ですから、発情期もない同種もいるでしょう。これから不定期にやってくると思いますが、頻繁ではありません。色んなバランスが崩れた時に突然訪れる、風邪みたいなものです」 『だから気にしなくていい』と末野原先生は笑った。 いやいや、決して笑いごとではない。俺は先生に訴えた。 「どうしたら治まりますか?」 「大体一週間経てば治まります。狐も一週間くらいですね」 「薬とか……ないですか?」 「ホルモンを抑える『人間』の薬ならありますけど、狛崎君に効くかどうか。狐人間のホルモン値が分からない今、安易に処方しかねます。貴方の身体に何かあったら大変です」 血液検査が出る頃には発情期は終わっている。つまり、一週間耐えろということか。 身体の火照りや目眩は寝てれば何とかなりそうだ。 しかし、大問題が1つある。 それは非常にムラムラすること。 顔が熱く、さっきからずっと生理的な涙目になっている。誰かに触れられたくてしょうがなかった。小刻みに震える肩を両手で抑えた。 「狛崎君には優樹がいるでしょう。困った時は彼を頼ればいいんですよ」 「木ノ下さん、、を」 「何でも相談してみて下さい。彼は見かけより優しいと思いますよ」 「はあ……」 「一応、解熱剤を出しておきます。熱が上がったら飲んでください」 木ノ下さんが優しいことくらい知ってる。けど、ムラムラするから触ってくれなんて、口が裂けても本人に言えなかった。

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