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第5話 変化【木ノ下と眞那斗】

診察を終えた頃には夕方になっていた。途中まで俺を待っていた木ノ下さんは、急用で会社へ戻ったらしく、帰りは中野君が送ってくれた。 重い身体を引きずりマンションに帰り着く。 目眩のため一目散に自室のベッドへ潜り込んだ。 (……それにしても一週間は長い。外にも出られないし、何して過ごせばいいんだろうか……はぁ……とりあえず寝よう。全ては起きてから考えよう) どうやら一連の変化で、俺はとても疲弊しているようだった。 一時的に人恋しくなって暴走しないように、くれぐれも木ノ下さんに相談しなさいと、何度も何度も末野原先生から念押し注意をされていた。 (人間を見境なく襲ったりしないって。俺を性欲妖怪みたいに言わないで欲しい。だいいち性欲なんかあんま無いし……) 睡魔が俺を包み始める。長い一日を反芻するまでもなく眠りへ落ちていった。 起きたら朝だった、を期待していた。 熱くて起きざるを得なかった。とにかく寝汗が酷くて、不快感から目が覚めた。 むくり、と起き上がる。枕元の携帯は深夜1時を知らせていた。 辺りはとても静かだ。木ノ下さんも寝たに違いない。俺はシャワーを浴びるべく、浴室へ向かった。 ところが、がらりと開けた脱衣場に半裸の木ノ下さんが居たのだ。風呂上がりだろう、濡れた髪を拭いていた。 「お、起きたか。身体はどうだ?」 驚いた俺はその場でへたり込む。 「…………てっきり寝た、かと」 「さっき帰ってきたとこ。もう寝るよ」 「あの、今日はありがとうございました。一週間くらいで治るみたいです」 「翔吾は怖くなかっただろ」 「優しかったです」 俺は、半裸の木ノ下さんを直視出来なかった。引き締まった胸や腰がいつもよりやらしく思えて仕方なかったのだ。 俺の心を知ってか知らずか、木ノ下さんはこちらへ寄ってくる。 「ひぃっ……」 「翔吾から聞いた。辛くないか?」 「だ、だ、だ、だ、だいじょう、ぶ……」 じゃ、なかった。 まるで身体の血管が沸騰したかの如く、熱い。頭から湯気が出そうだ。 「狛崎。俺にして欲しいことあるんじゃないの」 しゃがみ込んだ木ノ下さんが、俺と目線を合わせる。 濡れ髪に、風呂上がりでいつもより赤い唇。どこで鍛えてるのか不明な胸筋。お腹は全く出てない。寧ろ少し割れている。そして木ノ下さんには肌色よりのピンクがかったすごく綺麗な乳首がある。 ぴっちりとしたボクサーパンツには、あの大きなモノが行儀良く収まっているようだった。もっこりと膨んでいる。 控えめに言ってもエロすぎだ。セクシーと表現したほうがいいのかもしれない。 「ななななな、なんにも、ない、です」 興奮から息が上がる。 「本当に?」 「………………ないったら、なな、な、い」 「ふうん。ならいいけど」 つまらなさそうに、木ノ下さんがあっさり立ち上がる。 「あ…………待っ、、て」 無意識に手が木ノ下さんを引っ張っていた。前のめりになった彼の唇に食いつく。 もう抑えが効かない。 これが『発情』であると、脳みそへしっかり刻まれたのである。

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