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第4話君に拾われた日から

「で、君は一体何をしたのかな?」 拓が帰ったあと、ソファの上で毛布に包まる赤毛へ話しかけた。 実のところ、赤毛は少し前から覚醒して辺りを伺っていた。そしてこちらをじっと観察している。鋭い眼光だが、重罪を犯すような狐には到底見えなかった。 「お前こそ誰だ」 「初めまして。俺は七瀬。ここのコミュニティの管理人だよ」 「…………」 「身体の傷は‪誰にやられた?」 「……あいつらは、俺に用はない」 「だって君は重罪を犯したから、追われてるんでしょう。皆が君を血まなこになって探してるって。大切なものを盗んだ、もしくはどこかに隠したとか?殺人?傷害?一体何をやったの」 赤毛の眉がピクっと動く。 「そんなことやってねえし」 「じゃあ何をやったか教えて」 「………………出てけって言うなら今すぐ出てく」 「どっちでもいいよ。俺の部屋は簡単に誰でも入れる訳ではないから」 俺は他人の干渉を極度に嫌うため、部屋には簡易結界が張ってある。俺が許可しないと入れないし、部屋を出ることもできない。 赤毛にどれほどの力があるのか不明だが、彼はフンと小鼻を鳴らし、再びソファへ沈んだ。 「君が何者か分からない限り、外には出られないと思うよ」 「………………」 俺の話は赤毛には全く響いていないようだった。気にもしていないような素振りで、ぐうぐう眠っている。 暫く様子を見ていたが、執筆もひと段落ついたため、俺も就寝することにした。 夜が明ける頃に寝床へ入る。明るい昼間は全てを見透かされているような気持ちになるから苦手だ。 間もなく訪れる光の時間に固く目を瞑った。 目を開けると、時刻は昼過ぎだった。いつもより目覚める時間が早いのは、カリカリという小さな音が振り子時計のように絶え間なく響いていたからだと気付く。 赤毛が台所で何か食べていた。 今まで俺が保護した狐達は大体怯えて縮こまる。虐待が日常化してくると、無意識に強者を避ける傾向があり、心を閉ざすのが常だが、赤毛は違っているようだった。何にも気にしていないように見える。 身体中はあんなに傷だらけなのに。彼のメンタルはどうなっているのだろうか。 そんな彼に興味が湧いた。

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