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第8話君に拾われた日から

赤毛が話した内容を正直にハクへ伝える。但し、彼女の詳しい居場所は伏せて。ハクは苦虫を噛み潰したような困惑の表情になった。 (なんとなくは知っていたようだ。疑惑が確信に変わったか) こちら側としては赤毛を引き渡すつもりはない。妹のことを考えれば、何も知らなかったことにして北へ戻って欲しいと伝えたが、北のリーダーは納得しないだろう。 しかも彼女がうちのコミュニティに居ることが問題なのである。沢山の可哀想な同族を見てきたからこそ、逃げることが出来た子は守ってやりたかった。 「君はどうする?このまま帰るか、引きずってでも彼女を連れていくか。戻れば彼女は確実に地獄だよ。ま、善人になれとは俺も言わない。君の立場もあるだろうから、よく考えて決めればいい。但し、うちのコミュニティに赤毛と彼女がいる限り簡単には手出しさせない」 「………………分かってます…………ちょっと考えます。すみません」 黙り込んだハクは、そのまま部屋を後にした。 俺は隣の部屋に隠れているであろう赤毛へ話し掛ける。 「おーい赤毛君、ここにいることが公になれば更に命を狙われるよ。今なら逃がしてやれる。好きなところへ行けるぞ」 「………………」 考えているのだろうか。何も答えがない。 本人の意思でどこかへ行きたいのならば、行かせてやりたい。 彼の特殊な能力はこれからも周りの人を翻弄させ、新たな争いを生むだろう。 いくら自分の手元に置きたいと思っても、能力ありきの邪な考えが無いとは言えない。上との、しいては人間との取引きにも十分通用してしまう能力だ。 いつか彼を道具として扱う時が来てしまったら。代償があると分かっていても利用してしまうのが怖かった。 「……俺が、ここにいたいって言ったらお前は迷惑か」 奥にいた赤毛がそろりと出てきた。深く被っていたフードを上げる。目にも鮮やかな赤毛が光った。 「ここに?」 彼はこくんと頷く。 「理由を教えてくれ」 「離れたくない」 「そんなにこのコミュニティが気に入ったんだ」 「違う。お前と離れたくない」 彼の熱烈な告白に戸惑う。 家族のような安心感は赤毛も同じだったのか……? 「さっきも言ったけど安全ではない可能性がある。君を守りきれるか断言できない」 「俺の能力を使えば、大体はどうにかなる」 「使っても構わないのか」 「お前の傍でなら使ってもいい。俺は生きることに執着しない」 『別に死んでもいい』と言い切る彼の目に嘘はなかった。彼は嘘をつかない。言葉にするか、黙るかの2択しかない。 「君がそうしたいなら、俺は拒まないよ。傍にいてくれて構わない」 「……………よかった」 そう言うと、ふわっと笑ったのだ。彼を拾ってきて初めてのことで、いささか驚いた。 (なんだ。こいつも可愛い顔するんだ) じっと見つめるつぶらな瞳に俺は負けた。今のところ、赤毛と暮らしていて不便なことは何も無い。周りを説得すれば何とかなるか。 丁度ここでの毎日に飽きていたところだっま。ただ、赤毛と俺は引越しをした方が良さそうだった。

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