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26.湯けむりで目隠し 14

そして引っ張られるままに温泉町まで出てきてしまった。 「なんだよ、反省会って」 すると東海林が振り向いたかと思えば不敵な笑みを浮かべた気がして、思わず身構えながら気迫負けしないように思いっきり睨み返すと、クックックッと腹を抱えて東海林が笑い出した。 「ど、どうしたんだ?」 思ってた反応と違って若干焦っていると。 「あー面白い」 「何が」 東海林が声を出して笑うとか不気味すぎて恐る恐る聞いてみると、また東海林はニヤリと笑った。 「新藤ってお前が絡むと表情豊かになって面白すぎ。何なの? お前らって」 「な、何って……と、友達だろ」 「普段は顔色ひとつ変えやしないくせにな。千秋のこととなると話は別だ」 意味ありげに言われたような気がして視線が刺さるように痛い。 でもここは下手に何も言わない方がいいような気がして東海林の出方を伺っていると、東海林は近くにあったベンチに座りせせら笑いを浮かべた。 「俺さ、人が困ってるの見るの好きなんだよね」 「……はぁ?」 「それも普段見れないような顔がさ、特にいい」 「……言ってる意味がわからないんだけど」 「新藤みたいに普段何も動じなさそうなやつが、狼狽える姿とか見てて楽しいじゃん。わかんね?」 全然わからないけど、そんなの楽しむのって……。 「お前ってさ……もしかして」 ドSなの? って言いかけて、やっぱ言うのをやめた。 聞くのおかしいと思ったからだけど、東海林は当然のような顔をしてあっけらかんと言う。 「サディストだけど? 真性の」 「つかお前、俺の心を読むなぁ!!」 俺がそう言って叫ぶとまた東海林はクックックッとのどを鳴らしながら笑った。 つか、さっきからそんな話をしてる場合じゃねぇ。反省会だかなんだか知らないが、そんなのはさっさと終わらせて俺は旅館に戻りたい。 「で、何しにここまできたんだよ」 「言っただろ? 俺の足を引っ張った罰。お仕置きと言った方がいいか?」 「何で勝ったのにお仕置きなんだよ」 すると東海林はベンチに座りながら足を組み、偉そうな態度のまま俺のことを嘲笑うような目で見上げた。 「千秋のミスで無駄にした点教えてやろうか?」 「はぁ? 数えてたのかよ暇なやつだな」 「頭がいいんだ」 「自分で言うな!」 もうこいつに何を言っても無駄な気がしてため息が出た。 でも、ドSな東海林のお仕置きって何? お仕置きって言い方が怖ぇ……。なんか、俺……されるのか?

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