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26.湯けむりで目隠し 15
そうやって軽くおびえていると、東海林がまたクスリと笑った。
「言っただろ? 俺は人の困った顔を見るのが好きなんだよ」
「……な、何をするつもりなんだよ」
「千秋は俺に何をされたら嫌がる?」
「何されても嫌だ!」
「へー、それは楽しみだな」
た、楽しみって。
真性のサディストって扱いにくい!
すると東海林がベンチから立ち上がって俺のことを見下ろすと、また笑みを浮かべた。
何をされるのかと身構えている俺の顎を軽く掴んだかと思うと、ゆっくりと顔が近づいてきて……。
「……そうだな。キスでもしてやろうか?」
その言葉に心底驚いてカッと目を見開くと、また東海林がクスクスと笑う。
「冗談だ。ボケが」
そしてまた馬鹿にしたような目を向けて面白そうにしている東海林を見て、しまったと思った。
「……そ、そんなんわかってたに決まってるだろ!?」
「千秋ってさ、からかい甲斐があるって言われるだろ?」
「言われたことねぇよ。お前こそ意地が悪いって言われるだろ?」
「サディストだからな」
いやいやそれで全部まとめるな!
もう、めんどくせー!
「もういい! お仕置きでも罰ゲームでもなんでもして、さっさと終わらせろ!」
すると東海林はまたベンチに腰掛けると、俺のことをじっと見た。
「な、なんだよ……」
「俺は別に直接的に千秋に何かをするつもりは無いよ。でも、千秋には足を引っ張った相当の罰を受けてもらわないとな」
「……い、嫌だ!」
「拒否権あると思ってるの? 俺はミスしてない。でも、千秋は何点分ミスした?」
う……。
確かに東海林は未失点だった。
失点は全部俺のミスだったけど、うんも寸も言わせないような東海林の睨みに反論できない。
蛇に睨まれたカエルってのはこんな気分だったに違いない。
哀れなカエルよ。
お前の気持ちがよくわかるぜ……。
でも頑張れ、俺。
負けるな、俺。
「た……たかがゲームじゃん」
「されどゲームだ。俺がギリギリで勝つなんてありえない」
「勝ったんだからいいじゃん」
こいつに睨まれたら、まじで怖いんですけど。
するとだんだん東海林に洗脳されてしまったのか、ただ単に怖いだけなのか。
罰ゲームを受けることになってしまった。
さっさと終わらせて帰りたい。頭の中はもうそれだけだ。
すると東海林は眼鏡をカチャッと掛け直すとある場所を指差しながら言った。
「ってことで、あそこのコンビニでコンドーム買ってこいよ」
……はぁ?
…………コンドーム?
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