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26.湯けむりで目隠し 18
すると東海林がニヤリと笑いながらもう一歩俺に近づいて来た。
思わず後退りそうになるのを堪えて睨み返すと、東海林は片方の口角だけをあげて薄ら笑いを浮かべそっと顔を近づける。
「なんなら俺が付け方教えてやろうか?」
「い、いらねーし!」
「遠慮するな。早くおっ勃ててみろよ」
「勃つわけないだろ!」
東海林は俺がまた焦っているのが面白かったのか、ケラケラ笑うと指で俺の額を小突いた。
「冗談だ、バカが。おまえって本当にからかい甲斐があるな」
そう言ってコンビニ袋の中からガムを取り出して勝手に食べながら歩いていってしまう。
「うるさい! ってか、それ俺が買ったんだけど。おい、勝手に食うな!」
「ケチな奴だな。そんなんじゃ、モテねーぞ」
「お前に関係ないだろ! つか、なんで修平ってお前と友達やってんだろ?」
「新藤に聞けば?」
「お前なんて性格悪いしムカつくし傲慢なのに」
そう呟くとニヤリと笑った東海林が俺の顔を覗き込みながら「褒めてんの?」と言うと踵を返しスタスタと歩いて数段の石の階段を上っていく。
「褒めてねーし! これのどこが褒め言葉だ!? この変態サド野郎が!」
そう言って後ろからコンビニ袋を取り上げようとしたら、わかっていたかのようにひょいっとかわされてしまう。
その後も何回かトライするもあしらわれ、ムカつくからムキになって今度は前から突っかかって行くとまた東海林はひらりと身をかわし、コンビニ袋しか見てなかった俺は階段の上でバランスを崩してしまった。
「うわっ!」
そういった瞬間ってどうして頭の中スローモーションになるんだろう。
旅行に来てまで階段から落ちて怪我とか最悪すぎるだろ。
とう思いながら衝撃にそなえて無意識にギュッと目を瞑っていた……………………。
でも次の瞬間、体に衝撃が伝わるものの感じたものは予想とはまるで違って。
あれ? 痛くない……。
不思議に思って恐る恐る目を開けてみたら、俺と同じ旅館の浴衣の柄が目に入ってきた。
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