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26.湯けむりで目隠し 20

そして旅館に戻ると、部屋では着々と夕食の準備が進められていた。 「千秋とジョージくんジャストタイミング~」 部屋には人数分のお膳が並べられていて、先に座ってその様子を見ていた航にハイテンションで出迎えられる。 多分、航なりに空気を読もうとして明るく振舞ってくれているんだろうけど、でも若干目が泳いでいるのは否めない。 俺と修平とのことを知っている航のことだ、修平が俺たちを探しに行った時点で心配していたんだろうなって思うとなんか申し訳なく感じた。俺だってさっきはどうなることかと思ったわけだけど。 でも、仲居さんたちが運んでいる豪華そうなお膳を見ていると一気にテンションがあがって来る。 そしてそれは修平も笑っていたから尚更で、その笑顔を見ただけでホッとしたところがあり、さっきのコンビニでの一件のことなんかすっかり忘れてしまって今は目の前の料理に夢中になりつつあった。 本当に俺はつくづくお手軽な奴だ。 「千秋」 夕食の準備に見とれていると修平が手招きしたので、修平の横に座ると修平はやっと安心した顔になった気がした。 「大丈夫だった? 東海林に何かされなかった?」 「だ、大丈夫!」 修平がいうと俺の向かいに座った東海林が「なんだその言い方」と言いながら、さっき俺が買ったコンビニ袋を見せ付けた。 「新藤は千秋の母ちゃんかよ。別にコンビニでつまみ買わせただけだし」 つまみってそれ、俺のおやつなんだけど。 俺がムッとして言い返そうとしたとき、仲居さんが前菜と食前酒を持ってきてくれた。 食前酒と聞いて酒か!? と思った矢先。 「未成年の方はどなたですか?」 と仲居さんに尋ねられたので俺が手を挙げる。 「未成年の方にはリンゴ酢を用意するように伺っておりましたので」とにっこり笑って目の前にりんご酢が置かれた。 そして修平のほうをみると、頷くように微笑んでいるということは……。 本当に用意の良い人だと思いながら感心していると、航の乾杯の音頭によって宴会がスタートしたのだった。

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