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26.湯けむりで目隠し 21

*** 料理は一品ずつ出てきて、どの料理も彩りやら盛り付けもとても綺麗だった。 こんな本格的な和食懐石を食べたのは初めてだったけど、どれもすごく美味しい。 造りは新鮮だし、煮物も美味しかった、吸い物は出汁がよくきいてて流石って感じだったし、焼き物では地元牛肉の鉄板焼きで豪華。鯛めしもうまかったなぁ。 それに加えてデザートの豆乳プリンと洋ナシのコンポートっていうのも美味すぎた。 もう食えないってくらい満足していると、酒を飲んでいた俺以外の面子もいい感じに酔ってきているようで楽しそうに酒を飲み交わしている。 この夕食には決まった種類のお酒ならば時間制限ありで飲み放題が付いているらしく、航なんかは東海林に勧められ、普段飲まないという日本酒にもチャレンジしていた。でも勧められた辛口は口に合わなかったみたいで渋い顔をしていたのがすごく笑えた。 その東海林はというと、酒がめっぽう強いみたいでほとんど顔色を変えることなく飲んでいるし、俺みたいな下戸もいれはこんな奴もこの世には存在するのだ。 修平もビールを少し飲んでいたけど俺に合わせてくれているのか、途中からは同じように烏龍茶を飲んでいて、俺はそれで修平が楽しめているのか少し気になっていた。 「修平も俺のことは気にせずに飲めよ」 「飲んでいるから大丈夫だよ」 そんな中で修平が思いだしたかのように航の空になったグラスにお酒を注ぎながら言う。 「そういえば藤原さんとはあの日以降に会ったの?」 「うん、1回だけお茶したよ」 すると俺の向かいに座っていた東海林が「藤原ってあの藤原?」と修平に聞き、修平が頷くと。 あの東海林が珍しく驚いた顔をした。 東海林の驚いた表情なんて今までに一度だって見たことがなかったからそれだけでも藤原さんは何者なんだ⁉︎ って感じなんだけど、それよりも気になったのは……。 みんなには聞こえてなかったみたいだけど。 「……お前、よく紹介できたもんだな」 って、東海林がボソッと呟いた独り言みたいな言葉を俺はちゃっかり聞いてしまったから。 え、なにそれ。 フジワラサンって一体どんな子なんだよー。 今まですっかり忘れていた藤原さんの存在が再浮上してまた頭の中をグルグル回ってしまう。

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