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26.湯けむりで目隠し 22
それでなんとなく気になって小声で東海林に聞いてみた。
「お前はさ、藤原さんの電話番号とかLINEとか知ってる?」
「はぁ? そんなもん知るかよ」
その東海林の言葉を聞いて、また俺の頭の中で変な妄想が爆発してしまう。
修平は誰にでも連絡先を教えたりしない方だ。異性なら尚更。
でも、修平は藤原さんの連絡先を知ってたし、でも東海林が知らないってことは……。
やっぱり藤原さんの方から聞いてきたってことなのかな。それも修平が教えるくらい最もな理由を付けて……って、勝手に藤原さんからって思い込んでるけど、考えれば考えるほど、また藤原さんって修平に気があるんじゃないかっていう変な妄想が頭の中を巡っていく。
やっぱり航は藤原さんと上手く行くべきなんだ。
東海林が呟いた言葉は気になるけど、航は気が合うみたいなこと言ってたし、あの後もお茶してるくらいだし、最終的には本人次第だし。
いや、決して航を藤原さん→修平のブロックに使おうなんて考えてないんだからな。
航だって彼女欲しいって言ってたからだ! うん!
そんな勝手な決意を俺が心の中でしていたことなんて誰も知る由もないが、豪華な夕食を堪能してみんなは酒も飲みまくって終演となったのだった。
夕食が終わるとテンションあがりまくりの航は、気分がいいからもう一度露天風呂に行くと言い出す。
「みんなも一緒に行かないか?」
「おう、……」
俺も行く。と言いかけたところで修平が「僕らはあとで行くよ」と言ったので、航は一人で露天風呂へと向かった。
そして東海林はというと、仲居さんにここら辺でもう少し飲めるところはないかと聞いていた。
「まだ飲むのかよ」
「飲み足りない。旅館内にバーがあるらしいから行ってくる」
そう言ってすたすたと部屋を出て行ってしまう。
どんだけ飲むんだよ!
どんだけ強いんだよ!
そんなことを思っているとさっきから時計を確認していた修平が俺の手を取って部屋を出ようとした。
「僕たちも露天風呂行こうか」
部屋にいてもやることないし、せっかく温泉に来たわけだから俺も頷いて修平のあとをついていく。
航もいるだろうしな……とか思いながらやってきたのは……。
一の湯でも二の湯でも三の湯でもなくて……………。
その隣にあった貸切露天風呂────!?
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