やばいやばい！ やばすぎる！ 床に落ちた箱を見つめながら思わず固まってしまい、驚きすぎてうまく言葉も出てこない。 東海林に懐に入れられていたのをすっかり忘れてた。 つか、修平めっちゃ見てるし言い訳とか出来そうにないし。 いや、悪いことなんて一個もしてないから言い訳なんてする必要もないんだけど、妙にそわそわしてしまうじゃないか。 くそボケ東海林！ 全部お前のせいだからな！ 俺が何も言えずにあたふたしていると、修平がその箱を拾い上げて俺の方を見た。 「コンドームなんか、どうしたの？」 「そ、それは……」 「どうして千秋がコンドームなんか持ってるの？」 「……あ、あの」 ゆっくりと冷静な口調で訊ねられるのが妙に苦しい。 「ば、罰ゲーム……だったんだ」 「罰ゲーム？」 「しょ、東海林が……俺が失点したから、買って来いって……睨むから」 変に取り繕うと余計に誤解されそうだと思ったので、恥ずかしかったけどさっき東海林に罰ゲームで買ってくるように言われたと正直に言った。 俯きながらぽつりぽつりと話すと、修平は呆れたかのようなため息をひとつついた。 「そっか。それはわかったけどさ……」 それでも修平の視線が痛いままな気がして顔を上げられずにいると。 「でも、どうして箱が開いてるの？ 中身も減ってる。……もしかして使った？」 思わぬ言葉にとっさに顔を上げてかぶりを振る。 「つ、使ってない！ それは東海林が、持っていった！」 どうしよう、東海林なんかと浮気したとか思われたら最悪だ！ 誤解なんかされたくないし、せっかくの旅行なのに喧嘩とかしたくないし！ そう思うと無我夢中で修平に抱きついていた。 「千秋？」 「う、う、浮気なんかしてないからな！」 そう言ってみたものの、また修平の冷静な声が響く。 「疑ってもないのに言うのってなんか怪しいな」 え──！　逆効果!? もう、どうしたらいいかわからなくてオロオロしていると修平がクスクス笑いながら俺のことを抱きしめてきた。 「ごめんね。冗談だよ。浮気してるとは思わないけど、さっき東海林と出て行ったときはムカついたからね」 「それは東海林が……」 すると修平が俺の口を人差し指で優しく塞ぐ。 「シッ、これ以上僕に嫉妬させないで」 そう言うと修平は俺の手を引いて貸切露天風呂に入って行った。