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26.湯けむりで目隠し 30

するとまた俺の身体に異変が戻ってきた。異変というか安心したからなのか、何なのか。 急にまた……体が疼き出してきてしまったんだ。 笑顔の修平が嬉しくて、濡れた髪が色っぽくて、ほんのり紅い顔に欲情してしまう。 やばい、修平に触れたい。 触れられたい。 旅ってものは人を開放的にさせる効果でもあるんだろうか? 恥ずかしさとかを麻痺させるとか、そんな感じの作用が。 修平が俺の目を見て微笑むだけで、体が熱くなる。 さっきみたいな指だけでは物足りなくて、もっと奥まで掻き回してほしいとか思ってしまう自分の思考回路にも赤面してしまう。 もっと修平がほしいとか……言っても修平は呆れないかな。 そんなことを思っている時に見る修平の微笑みは俺の胸に刺さり堪らなくなる。 濡れた髪をかきあげて額が見えるといつも以上に大人っぽく感じて端正な顔立ちを引き立たせた。毛先からポタポタと滴り落ちる水滴すら格好いい。真っ直ぐに俺を見つめる目には熱を帯びてるような気がして、自分も高揚するのがわかった。 自分の中から沸き起こるこの感情は留めておくには大きくなりすぎて、目の前にいる修平にどうにかして欲しいと思う。 多分、俺はのぼせてんだ……。 だからこんなこと言えちまうんだ。 そう心の中で精一杯自分に言い訳をしながら、口からは欲望がそのまま言葉になって出ていた。 「しゅ、修平の……挿れて、欲しい……」 言ってるそばから恥ずかしくなって俯いて真っ赤になりながら修平に伝えると、なぜか修平の動きがピタッと止まった気がした。 まるで気配が消えたかのように静かなので、やっぱり呆れられたかと思って顔を上げると……。 修平が俺から目を逸らし、なぜか耳まで赤くしていた。 「修平、のぼせた?」 俺の声にはっとするようにして微笑むと、軽く頬にチュッとキスをする。 「千秋があまりにも可愛いこと言うからびっくりしちゃった」 「え?」 「千秋は僕を煽てる天才だね」 そう言うと修平は俺の耳元で「ちょっと待ってて」と囁き、足早に脱衣場に向かって何かを持ってきた。 修平が持ってきたものは、さっき俺が東海林に買わされたコンドームの箱だった。

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