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26.湯けむりで目隠し 36

ようやく息が整い露天風呂に浸かりながら岩にもたれかかって紅葉を見上げる。 「1時間ってあっという間だな」 そう俺が言うと、微笑みながら修平が俺の顔を覗き込んだ。 「楽しいコトしてたら余計にあっという間だよね」 “楽しいこと”って聞いたらさっきのことを生々しく思い出してまた気恥ずかしさが増してしまい、ブクブクと息を吐きながら鼻の下までお湯につかると修平にきつく抱き寄せられた。 「千秋は楽しかった?」 耳元で囁かれる声が何とも艶めかしくてエロい気がする。だから俺が何も返さずにいるとまた修平は無駄に色気を振りまきながら「楽しかった?」と耳元で囁きながら聞くのだ。 「…………腰が痛ぇ」 俺がそう言うと修平はクスクス笑ってまた俺に聞いてくる。 「ねぇ、気持ちよかった?」 そんなん聞かなくてもわかるだろうに、いちいち聞きたがるところが本当にムカつく。 目だけを動かして睨みつつも、相変わらず楽しそうに笑っている修平の顔を見ると、さらに体温があがった気がした。 「気持ちよかったに……決まってるだろ……楽しかったよ…とても」 尻すぼみにゴニョゴニョ言うとまた修平はクスクス笑っていた。 そして修平が耳元で「僕もだよ」って言ったのが妙に甘くて、旅行に来て良かったって一番思ったシーンかもしれない。 友達と一緒に来てるというのに、そのときはお互いしかいないような気がして、すごく幸せで心まで温もった気がした。 でも、冷静になればなるほどに気になるのが……。 「なぁ、……俺……声、大丈夫だったかな」 最初の方はまだ我慢出来たように思うけど、二回目は確実にアウトな気がしてならない。 俺はこんなにハラハラしてるというのに修平はあっけらかんと「さぁ、どうだろう」と言う。 「どうだろうじゃねぇよ! ちゃんと聞いとけよ。漏れてないか!」 「それを言うなら千秋の口から出てるわけだから、千秋が一番よくわかるはずなんじゃないの? ……あれ? もしかして、気持ちよすぎて記憶にないとか?」 「う、う、うっせーよ! ただの確認だよ! 確認!」 実際は行為が気持ちよすぎて記憶から“声を抑えられたかどうか”の部分がすっぽりと抜け落ちてしまっていたのは事実なのだが、でも修平の言う通りだとしても認めるのは悔しくて背を向けると、修平も追いかけるように体を寄せて後ろから囁くように言ってくる。 「我慢できずにどうしても漏らしちゃう声……ってかなり色っぽくてよかったよ。僕、そう言うの結構好きかも」 「お前の感想なんか聞いてねぇんだよ」 「冷たいな。気持ちよかったんだろ? 凄く」 俺の顔を覗き込んだ修平の目は明らかに愉しんでいるように見えた。

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