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26.湯けむりで目隠し 38

すると修平が優しく目を細めながら俺の頬を撫でた。 「ここでキスしたら抑えられる?」 修平に問いかけられて、正直どうだろうって考える。 「……無理かも」 「じゃあ、キスしない?」 「……やだ、したい」 「千秋、我が儘だな」 そう言ってクスクス笑うと修平が軽く啄ばむようなキスを何度か俺の唇に落としてきた。 修平の唇が触れると気持ちよくて、もっとって今度は自分からも唇を押しつけるようにキスをする。 「可愛い。今日は積極的だね」 「だから、旅行サービスなんだって!」 「それなら、また絶対に2人で来なきゃね。そしたらまた旅行サービスしてくれる?」 「……してやってもいいけど」 修平はクスクスと笑いながら俺を軽く抱き締めると、また顔を近付けて軽いキスを繰り返す。 そんな風に俺たちは、たった3分間だったけど深くなりすぎないキスを余すところなくして貸し切り露天風呂から出たのだった……。 部屋に戻る途中で自販機の前を通ったとき修平が立ち止まった。何か買うのかなと思って待っていると、炭酸飲料のペットボトルを買って戻ってくるなり俺にそのペットボトルを渡してくる。 「千秋これ」 「俺が飲むの? 修平が飲みたいんじゃなかったのか?」 「飲むけどね。その前に、顔……冷やして」 「なんで?」 言ってる意味がわからずにペットボトルを持ったまま立っていると修平がそのペットボトルを俺の顔に押し付けてきた。 「冷てぇ! なにすんだよ」 「火照った顔なんて僕以外に見せちゃだめ」 「これはのぼせてんだ!!」 確かに風呂場でそういうことしたわけだけど、単に風呂上りって顔とか赤くなんじゃん。 なのに修平ときたら顔を近付けて小声で言うんだ。 「千秋のそういう顔は、千秋が思っている以上に色っぽいんだから。誰にもみせたくない。僕だけの特権なんだから」 ……もう、こいつは本当にこんなとこバカだと思う。 俺の顔見てそんなこと考えるのって修平くらいなのにさ。 そう思ったけど仕方ないから修平の言うとおりペットボトルを頬に当てて熱をとっていると、修平は満足そうに微笑んでいた。

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