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26.湯けむりで目隠し 42
修平も東海林も起きているようで、部屋の中からは何を話しているのかはわからないけど話し声が聞こえていた。
開いたその扉に近付こうとしたとき、航が思いついたように小声で俺に耳打ちする。
「いきなり入って驚かそうか?」
面白そうだからすぐに頷くと、俺たちはタイミングを見計らうように静かに様子をうかがいながら内扉へと近付いた。
東海林に一泡噴かせてやる絶好のチャンスじゃないか!
驚いた修平と東海林の顔とか想像するだけで面白いしにやけてしまう。
気配を消して一歩ずつ近付いて一気に中へ入ろうとしたその時、はっきりとした東海林の声が俺の耳に届いてきた。
「なぁ、新藤はさ。俺のことどう思ってるわけ?」
2人は何の話をしているのだろう。
なんとなく気になって戸をあけようとした手を引っ込めると会話に耳を傾ける。
それは航も同じらしく、2人して無意識に息を潜めていた。
ちらっと中を覗くと修平と東海林はまだ敷かれたままの布団の上で向かい合い、胡坐をかいて座っているようだった。
すると次に聞こえてきたのは修平のいつもと変わらない声。
「どうって、友達」
そして、少しだけ間が空いたかと思うと、やや低い東海林の声がまた部屋に響く。
「ひでーやつ……」
「じゃあ、どう言って欲しかったわけ?」
「まぁ、新藤のそういうとこも気に入ってるんだけどさ」
東海林がそう呟くように言った瞬間、バターンと部屋中に響く大きな音が中から聞こえてきた。
それは2人の話を聞いていて、全く会話の流れが見えないと思っていた矢先の出来事で、その音に俺と航は驚いて中を覗いてみると、なぜか東海林が修平を押し倒しているように見えて焦ってしまう。
何? なんで東海林が修平を押し倒してるんだ?
すると頭の中にさっき東海林が言った言葉がリフレインする。
『なぁ、新藤はさ。俺のことどう思ってるわけ?』
『ひでーやつ……』
『まぁ、新藤のそういうとこも気に入ってるんだけどさ』
……えっ!? 東海林ってもしかして。
もしかして、修平のこと……?
一瞬にしてぐるぐると疑問が頭の中を回っていく。
でも呆然としていた俺ははたと気づき、そんなことより修平を助けなければと思って部屋に乗り込もうとした刹那。
今度は何故か、修平がクスクスと笑う声が聞こえてきた。
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