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27.水面にひとつ 3

───… 修平とそんな少し未来の話をした数日後、同じように就活の話をしながら航とバイト帰りに本日発売のマンガを買うために本屋に寄った。 「帰ったら即効読もう」 「俺も」 大学生になって週刊誌派からコミックス派になったので、この発売日を心待ちにしていた。 それは航も同じだったようで、レジに並ぶのだって楽しいとか思えるほどに浮かれていたんだけど。 そんな最中、後ろからあまり聞きたくない声が聞こえてきた。 「お前ら、何ニヤついてんの? 気持ち悪いんだけど」 振り返ると、ノンフレームの眼鏡越しに鋭い眼光が光る、東海林だった。 「うるせぇよ。なんでお前ここにいるんだよ」 「本屋のレジに並んでいるんだから本を買いに来たに決まってるだろ。お前馬鹿なの?」 「な、なにー!?」 俺が反論するもお構いなく、東海林は俺たちを追い抜いて勝手に自分の本をレジに持て行ってしまった。 「馬鹿ってお前な! つか、割り込むなよ!」 「お前らがボーっと突っ立ってるから良いのかと思った」 飄々と言ってのける東海林にムカついていると、ほぼ同時に隣のレジが空いたから、文句を言いながらもマンガ本を差し出した。 「へぇ、千秋はマンガ買いに来たのか」 レジの商品を覗き込まれながら言われて、なんだかバカにされたみたいな気がして気分が悪い。 「じゃあ、お前は何買いに来たんだよ!!」 って俺もレジを覗き込むとめちゃくちゃ分厚くて難しそうな本が積み上げられていて、悔しいが言葉を失う。 そして精算を終えると、俺と航はマンガ1冊なのでビニール袋なのに対し、東海林は分厚い本数冊なので紙袋(しかも2重)で、それだけでなんか偉そうな気がしてムカつく。 「ジョージくん、何買ったの? 本屋で紙袋もらう人初めて見たかも」 「そうか? 俺はいつも紙袋だけどな。大学で使うんだよ」 「へぇ、やっぱジョージくんの大学は使うものも違うって感じだな。な、千秋」 「…………」 航はきっと空気を読もうと思って話題を振ってきたんだろうが、空気が読みきれてないところが玉に瑕だと思う。

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