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27.水面にひとつ 4

そろそろ帰るからと、航と一緒にその場を離れようとしたら東海林も同じ方向に行くらしく、暫くの間3人で話しながら行くことになってしまった。 なんとなく微妙な空気だ。 そう思ってるのは俺と航だけだろうが、とにかく胸くそ悪い。 俺らはこんなにも居心地の悪さを感じているのに1人だけ飄々としてるのもムカつく。 すると沈黙に耐えきれなかった航がさっきも同じような話をしていたのに、また就活の話を俺に振ってきた。 つか、まじでそれしか話題がないのか!? って思うけど話題すら浮かばない俺よりだいぶマシか。 「も、もうすぐ3年だし、来年の今頃は就活で忙しくしてんのかなー?」 「……そうなんじゃね? 実感、まだねぇけど」 さっきも同じような話をしていたので、お互いにやや棒読みでやり取りをしていると東海林も話に入ってきた。 「2人とも就職するんだ?」 「お前は違うのかよ」 すると東海林は頷きながら答える。 「大学院に行くつもりだから」 「へぇ~、やっぱジョージくんはすげーや」 そう航が感心して言った直後、航をすり抜けるように東海林の視線が俺に向けられたのを感じた。 「千秋はさ、こっちで就職すんの? それとも地元に帰るの?」 「は? まだ決めてねぇよ」 「ふーん」 なんだよ。その意味深なふーんは。 つか、俺がどこで就職しようとお前には関係ねぇだろ。 って思うものの、なんかその言い方がどうも引っ掛かって気になってしまうじゃないか。 「何だよ。ふーんって……」 するとタイミングよく東海林のポケットから着信音が鳴り響く。 東海林はポケットからスマホを取り出すと画面に視線を落とし、それを操作しながら俺に返事をした。 「俺も家を出ようかと思ってさ、千秋が地元に帰るなら千秋が出た部屋に住もうかと思っただけ。お前んち大学からも近いし便利良いし」 なんだ、部屋のことかよ。 意味深だなんて勝手に思って構えて聞いていたからちょっと拍子抜けしたが、まだ先のことなのに俺らが出た後の部屋を使おうと今から考えるなんてどんだけ図々しいんだ。

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