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27.水面にひとつ 5

俺たちの部屋からだったら大学も近いかもしれないが自力で物件探せよと思う。 それに俺らの今住んでいる部屋はルームシェア用の物件なのだ。だから部屋数も多いし学生が一人暮らしするには逆に不便なんじゃないかとも思った。 「確かに俺の部屋はお前の大学からも近いだろうが、俺んとこ2人用の部屋だぜ。2人用の部屋に1人って広すぎねぇか? 普通ワンルームとかだろ。航はワンルームだろ?」 「うん、そうだよ」 「ほら! 一人暮らしにはワンルームだ!」 すると東海林は不思議そうな顔をしたかと思えば、操作していたスマホしまうとまた視線を俺に向ける。 「1人で住むわけないだろ」 「じゃあ、誰と住むんだよ」 まさか彼女と同棲とか言い出すつもりかと身構えていたら予想外の返事が返ってきた。 「新藤に決まってるだろ?」 え? よく意味がわからなくて思わず動作が止まる。 「誰って?」 「だから新藤に決まってるだろ」 「はぁ? なんで修平と?」 「なんでって、何かと都合いいじゃん。研究やら発表のときとか……」 「はぁ? 研究?」 全然、話が読めないできょとんとした顔をしていると、東海林は軽く眉間にしわを寄せ鬱陶しそうに言った。 「だから、新藤も大学院行くんだから一緒に住んだら何かと便利かなって思ったんだよ」 ────えっ? 「…………修平が、大学院?」 修平が大学院に行くなんて話、初耳だ。 数日前に就職の話もしたし、今までだって何度かそんな話をしたこともある。 でも、修平の口から大学院の話を聞いたことはなかった。 ……いや。いつも話してるのは俺だけで、修平の口からは進路について詳しいことは何も聞いたことがなかったかもしれない。 この間だって、俺が就職しても一緒に住もうって話したら頷きはしたけど何も言わなかったし。 俺は、それを普通に修平も就職するからって勝手に解釈してたけど。 ……別に大学院に行くとか行かないとか、就職するとかしないとか、それはどうでもいいことなんだ。 それは修平の人生だから修平が思うように選択すれば良いと思う。 けど、俺が今気になっているのは……。 「あれ? 新藤は千秋にまだ何も言ってなかったのか?」 俺が知らなかった事実を。 …───東海林が知っていたことだ。

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