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27.水面にひとつ 6
その瞬間、全ての動きが止まってしまった俺のことを見て、東海林がニヤリと笑った気がした。
視線が合ってハッとして、動揺してるなんて知られたくないからぎゅっと拳を握り締める。
「べ、別に修平の進路なんだから、俺に言う必要ねぇじゃん!! あ、もうこんな時間だ。俺は帰る」
そして早くその場から離れたくて小走りで去った。
「待って千秋。じゃ、ジョージくんまたね」
後を追うようにして航が走ってくるのがわかった。
でも俺の頭の中は修平と東海林のことでいっぱいで、忘れかけていた不安がまた沸き起こってくる。
確かに、修平の進路の話なんて難しくて俺に言ってもわからないことかもしれない。
俺より東海林のほうが理解してくれるだろうし、場合によっちゃアドバイスだってしてくれるはずだ。
やっぱり修平は俺が頼りにならないから自分のことは言ってくれないのだろうか。
頭の何処かではそんなことないって思っているはずなのに、一度悪く考えてしまうとどこまでも落ちてしまうのが俺の悪い癖だと思う。
……それだけ、俺は俺に自信がないんだと思う。
少し先を行ってた俺に追いついた航は、俺がまたネガティブなことを考えていると気づいたのか、肩を優しく叩いてきた。
「大丈夫だよ。きっと修平くんはそのうち千秋にも言うつもりだったんだよ」
「……そう、だよな」
「千秋に言わないわけないじゃん」
そうだと信じたい。いや、信じている。
あんな東海林の一言よりも、今までずっと一緒にいた修平の態度の方が信じられる。
でも、心は重たくておさまりかけたモヤモヤは小さくなったり、また大きくなったりする。
表情の晴れない俺のことを気にかけてか、少し切なげな表情をしていた航が俺の顔を覗き込むと、にかっと歯を見せて笑いまた更にぽんぽんと俺の肩を叩く。
「そういえば、千秋ってもうすぐ誕生日なんだろ? マスターが言ってた」
「うん。2月2日」
「へぇ、節分の前日じゃん。きっと修平くんも楽しみにしてるんじゃないかな。オレ今度は邪魔しないから」
そういえば、修平の誕生日のときは航がいきなり家に来たんだっけ。
「今度はさ、ちゃんと心得て大人しくしてるよ」
「なんだよそれ」
俺が笑うと航の表情も柔らかくなった気がした。
そして航とは途中でわかれて帰ると、修平が晩御飯を作って待っていてくれた。
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