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27.水面にひとつ 10
しばらくして修平の足音が聞こえなくなったので、玄関からリビングの方に戻った。
やっぱり1人だと静か過ぎる気がしてすぐにテレビをつける。
でもチャンネル変えてみたりしたけど、これといって観たい番組もなく適当な番組にしてリモコンをテーブルの上に置いた。
きっと、さっきだって俺が、
「嫌だ。行くな」って言ったら修平は何の躊躇もなく残ってくれたと思う。
そんなに自分は好かれているって実感してるのに、どうしてこんなにも不安感が募るんだろう。
ずっと一緒に居て甘やかされるのが普通になってしまって、俺はとんでもなく贅沢になってしまったんだろうか。
ゼミ合宿には、東海林も藤原さんも行くらしい。
あの2人も同じゼミだったとは、どうしてこうも気になる人が集結するんだか……。
もう東海林のことは気にしないって決めたはずなのに、ソファに横になりながら天井を見上げると、はぁーと大きなため息が出た。
少し前までは違う大学だっていってもそんなに気にならなかったのに。
知らないことがあったって、当然だと思えてたのに。
でも、ここ最近はそんなバランスが上手くとれない。
知らなかったことを思いもよらないルートで知ってしまって、今まで気にならなかったことがどんどん気になってしまう。
知らないことが不安で、教えてくれないことも不安で、聞くのも怖くて。
そうしているうちに相手をどんどん追い詰めたくなる。独占したくなる。
世の中は知らなくていいことだらけだと思った。
知らなかったら、こんなに悩むこともなかったのに。
……って、俺ありえないくらいに暗いな。
バイトに行く前の腹ごしらえに、あまり食欲はなかったけど修平が作り置きしてくれていた料理の中から1品選んで軽く食べてからバイトに向かった。
────
───────…
バイト先の更衣室に行くと、航が先に来て着替えを済ませていた。
「今日から修平くんたち合宿だって?」
「あ、藤原さんから聞いた?」
「……うん。あの……さ、……」
何か言いにくそうにしている航を見て、たぶん東海林のことだろうなと思った。
「東海林も行ってるの知ってる」
俺が言うと航は少しほっとしたような顔つきになった。
「知ってたんだ」
「修平が言ってた」
「そっか……ゼミ合宿ってどんなことやるんだろうな」
「今回のは何やら研究発表があったり皆でディスカッションしたりするらしいぞ」
「へぇ、頭良い大学のディスカッションとか凄そうだな」
あははと航が豪快に笑うものだから俺もつられて笑って、それに今日は店も忙しかったこともあってそれ以上は何も考えずに済んだ。
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