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27.水面にひとつ 11
こういうときは特に、忙しいってありがたいと思う。
仕事のこと以外、何も考えずに集中してその日のバイトはあっという間に終わった気がした。
そしてバイトが終わり、部屋に帰るとまた今夜から修平がいないことを実感する。
がらんとした部屋は1人いないだけで同じ大きさなのに広く感じてしまって、もの寂しいような変な感じがした。
今までだって修平が1人で実家に帰ったときとか、この部屋で1人で過ごしたことは何回もあるのに。
その時はこんな気持ちになんかなったことなかったのに、弱気になってる自分自身にムカついてくる。
修平、今何してるのかな……。
ふと気になってスマホを手に取った。そういえば修平は夜に電話するって言ってたけど、未だ連絡はないまま時計は22時を表示していた。
「まだ勉強中なのかな?」
いや、でも学校行事は大概22時には消灯だろ……ってそれは高校生とかか。
そんな大学生きいたことねぇし。
じゃあ、まだ勉強してんのかな?
初日なわけだし、充分あり得るよな。頭良い大学だし。
自分から電話しようかと思ったけど、勉強中なら……と躊躇してしまう。
邪魔しちゃ悪いしな。単位がっつり取って来いって言ったのは俺なわけだし。
……でも、声がききたい。
しばらくあれこれ考えたものの、きっと出られない事情があれば出ないだろうし、出て忙しそうならすぐに切ると決めて通話ボタンを押した。
コール音が響くたびに、俺の心臓の音も連動して大きくなっていくようで、何をそんなに緊張してんだか息苦しさまで覚える。
そんな中、長いコール音の後に……修平が電話に出た。
『もしもし、千秋。ごめんね、僕から掛けるつもりだったんだけど』
「いや、いい。……今、大丈夫?」
『うん。少しなら、大丈……』
そう修平が言いかけたところで、後ろから
『おーい!! 新藤〜、どこ行ったぁ!!』
と修平のことを呼ぶ声が聞こえた。
「よ、呼ばれてるけど大丈夫?」
それに心なしか遠くでざわついているような人の話し声が聞こえたり、騒がしい様子が気になる。
もしかして、まだディスカッションの最中だったんだろうか?
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