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27.水面にひとつ 14
正直、さっきの話をするか迷ったんだけど、航は「喋ったら楽になる」って言ってくれた。
***
「…───ってことがあったんだ」
かいつまんで修平と喧嘩みたいになったことを話すと、航は俺の話を聞き終わるやいなや急に大きな声を出して。
『待ってろ! 話を聞いてやる!』と言って一方的に電話を切ってしまった。
「お、おい。ちょっと待て!!」
慌てて叫ぶも、既に通話は終了されていて、待ってろってなんだ? 話を聞いてやるも何も今話し終わったんだけど……なんて思っていたら、30分後にピンポーンとインターホンが鳴り響いた。
玄関をあけるとそこには航が立っていて、笑いながら俺にコンビニのビニール袋を見せつけてくる。
「お菓子とか酒とか色々買ってきた」
「俺は飲まねぇぞ」
「わかってる。酒はオレの分。千秋にはコーラとかジュースとか買ってきたぞ」
部屋に入るとローテーブルの上に買ってきたものを並べ始めた。
「結構、買ってきたんだな」
「うん。夜通しゲームするならこれくらい必要かと思って」
「お前、ゲームしに来たのか!? つか、明日もお前ってバイトじゃなかったか?」
航はニッと笑うと俺たちがよくやる対戦型のゲームをセットしてコントローラーを俺に渡す。
「大丈夫。オレ、すげー必殺技出せるようになったから一緒にやろう」
よくわからないけど、とりあえず航とゲームをすることになってしまった。
そんなこんなで航はビールを飲みながら、俺はコーラを飲みながらゲームしてた時間は結構長かったと思う。
気がついたら航は酔っ払っていて、コーラしか飲んでない俺も酔っ払った航のテンションのせいで、無駄にテンションが高くなっていた。
床にはいくつもの空き缶が転がっていたから、航は結構な量を飲んでいると思う。
「お前みたいに酒飲めたら楽しいだろうな」
「そっか? 二日酔いは結構きついぞ? こないだなんて起きたら世界が青みがかって見えたぞ」
「それ、普通に大丈夫か?」
青みがかって見える世界を想像していると、隣で航はケラケラ笑っていたから本当なのか嘘なのかはわからないけど、俺は酒なんて数口でぶっ倒れてしまうからこうやって楽しく飲めるのが羨ましい。
これだけ楽しそうなら嫌なことも、不安なことも、全部忘れられるんじゃないかって一瞬そんなことが頭をよぎって何となく切なくなって目を伏せた。
そんなとき航が静かに呟くように言ったんだ。
「……言いたいことはさ、全部言った方がいいよ」
普段は空気が読みきれないやつなのに、なんだか今日は航に心を見透かされている気がしてドキッとした。
でも、それを悟られまいと焦りながら目を逸らしてしまった。
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