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27.水面にひとつ 16

航に核心を突かれ、俺は黙ったまま少し俯くと小さくため息をついた。 「東海林か…………たぶん、気にしてる」 今まで心の中にずっと仕舞い込んでいたモヤモヤしたものを、俺は認めたくなかったんだと思う。 表面上はあんな性格の悪い奴って思ってるけど、東海林と自分を比べれば比べるほど嫉妬するなんていうこと自体が恥ずかしいような気になるくらい、敵わないと思ってしまってる自分もいるんだ。 それは同時に自分の自信の無さを浮き彫りにしてるみたいでまた落ち込んでしまう。 「あーあ、俺ってホント女々しいよな。もっと男らしくなりてぇよ」 って言いながらソファにもたれると、航が笑いながら「童貞だから?」なんて言って茶化してきた。 せっかく珍しく真面目な話をしていたというのに。 「お前な、童貞じゃないからって威張るな! これ以上経験値が低いことを自覚したくない」 「前から言ってるけどそんなに経験値に童貞かそうじゃないかって重要か?」 「俺には重要なことなんだ!」 すると航はまたケラケラと笑って俺の背中をバシッと叩いた。 「ちゃんと修平くんと話せよな」 「……でも、ウザがられたりしないかな」 「千秋が弱気とかウケるんだけど。大丈夫だって! 修平くんならちゃんと聞いてくれる」 そう言ってまた航は歯を見せて笑う。 「それに、もしも修平くんが千秋に何かしたらオレがぶっ飛ばしてやるから!」 そして航は自分の腕をグルグル回して見せた。 「お前、本当に良いやつだな」 「気になることは聞いたほうがいいよ。何でも言わなきゃ伝わらない。どんなに近くにいても、それで誤解を生んだら勿体無いだろ?」 「……どんな結果でもか?」 「どんな結果でも、オレだったら知りたいし。もし悪い結果だったら、オレがぶっ飛ばしてやるから!」 「お前、酒が入って気が大きくなってるだけじゃねぇだろうな」 「あ、バレた?」 「バレた? じゃねぇーし」 それから2人してめちゃくちゃ笑って、航が変顔とかするものだからまた笑って、航は飲んでるからだけど俺はまったく素面だったはずなのにテンションだけは高くて。 こんなに笑ったのいつ振りだろう? 笑いすぎて腹が痛ぇし。  ──そうだよな。修平が帰ってきたらちゃんと話そう。 楽しすぎて何時ごろまで騒いでたのかも忘れたけど、いつの間にか騒ぎ疲れて2人ともそのままリビングのソファと床で寝てしまっていた……。

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