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28.長いながい一日 3
喫茶店から歩いて10分くらいのところに航の住むアパートはあった。
見た目は随分古そうなアパートで、階段は錆びているし、上ると足音がカンカンと響く。
2階の右端の部屋のだったよな。
鍵をポケットから出そうとすると、軽く眩暈がした。
結構、ヤバイくらい悪化してきたみたいで、とにかく倒れる前に部屋に入ろうと思いながら鍵を開けて中に入ってみると、年数を感じさせる外観とは違い内観の方は新しさを感じさせる。
壁紙は白で清潔感があり、床はダークブラウンのフローリング。
すぐ入ったところがキッチンでその反対側にはユニットバスがあった。
そして6畳くらいの大きさの部屋にはベッドとコタツにテレビと一人暮らしには欠かせないアイテムが揃っている。
見晴らしはどうかとカーテンを開ければ、でかい高層マンションが目の前に建っていて、それはイマイチかもだけど、それだから家賃も安くてラッキーだったと前に航が言ってたことを思い出した。
それにしても手の届くとこに何でも揃っているような落ち着く良い部屋だ。
航は部屋の中のものは何でも使って良いとは言ってたけど、客の癖にベッドを占領するのもさすがに悪い気がしたのでコタツに入って少し温まらせてもらうことにする。
暖かいコタツにもぐりこむようにして横になっていると、全身の力が抜けていくような気がした。
すげーあったまる。
やっぱコタツっていいな。
そんなことを思っていると急に眠気が襲ってきて、いつの間にか寝てしまっていた。
──ガシャガシャン。
次に目覚めたのは玄関のドアが開けられる音がしたときで、ゆっくり目を開ければ航が買ってきたものを冷蔵庫に入れている光景が目に入った。
いつの間にか寝入っていたみたいだ。
航が帰ってきたということは今は4時すぎか。
多分1時くらいに航の家に来たから3時間くらい眠れたことになる。
ゆっくり起き上がると、航が俺の目の前にスポーツドリンクを置いた。
「コタツで寝ないでベッドで寝ればよかったのに」
「……大丈夫、暖かかったし」
「でも、まだ顔赤いな」
航の手が俺の額に触れる。
外から帰ってきた航の手は冷たくて気持ちよかった。
「まだ熱、ありそうだな。おかゆ買ってきたから食えよ」
「あんま食欲ねぇけど」
「なくても食え」
それから航は忙しそうにお湯を沸かしてパウチに入った白がゆを暖めながら俺の額に冷却シートを貼り付けた。
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