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28.長いながい一日 4
食欲はあまりなかったけど、航のお母さんが漬けたという梅干はめちゃくちゃ旨かったからおかゆも思ったより食べられた。
でも、こうしていると航には悪いがまた切ない気分になってきてしまう。
俺が風邪引いたなら修平はきっとおかゆも手作りしてくれたんだろうな……とか、考えてしまうからだ。
俺が疲れたって言って出てきたくせによく言うよな。
そう思うとまた、無意識にため息が漏れていた。
すると航が俺の顔を覗き込んでくる。
「辛いか?」
「風邪ならだいぶ良くなった気がする。寝れば治る……」
すると俺の言葉を遮るように航が言葉を被せてきた。
「そうじゃなくて。いや、風邪もだけど。……修平くんのことだよ」
このまま修平とはどうなってしまうのだろう。
自然消滅みたいな感じで終わってしまうのだろうか。
でも、出てきてしまったのは俺で、きっと修平も呆れてこんな俺とは一緒になんて居たくないって思うんじゃないかって悪いことばかり考えてしまう。
白黒はっきりさせるのは意外と怖い。
男のくせに腹も据えられない自分が情けないけど、悪い方にしか考えられない今は全てに蓋をしてしまいたい。
「……もういいよ。俺が悪いんだし」
弱気になってるのは風邪のせいだと思いたい。
でも、航はすごく悲しそうに眉を寄せた。何が原因だとしても航には俺が投げやりになってるように感じたのかもしれない。
「千秋は悪くないだろ」
「俺が疲れたって言って出てきたんだよ。話し合おうって思ってたけど上手く出来なかったし」
「千秋は悪くないだろ! 好きな人が近くに居ないと不安だって気持ちは誰だって持ってる。悪くない!」
「今は正直、あまり考えたくない」
「好きなのに、なんでそんなに辛そうなんだよ⁉︎」
あえて切り込んできた航に思わず噛みつくように言い返してしまった。
「放っといてくれよ! 俺が悪いんだよ。ガキくさい俺が悪いんだ! 大人になれなくて割り切れない経験値の低い童貞だからなっ!」
「自分をそんなに悪く言うなよ。そんなに経験値とかって大事なのか? 違うだろ⁉︎」
自分が心底嫌いになりそうだ。
航に痛いところをつかれてついカッとなってしまって、ここで友達にまで八つ当たりするなんて本当にガキのすることだ。
航の言っていることは正しい。
童貞なんてどうでもいい。
経験値とか関係ない。
修平と一緒にいるならそれでいいって前から思っているのは俺なんだから。
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