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28.長いながい一日 5

でも、航の言ってることは正しすぎて、……痛い。 痛くて、苦しくなって、それをそのまま受け入れまいとまた天邪鬼な自分が邪魔をする。 「気にしてないつもりだったけど、どうなんだろうな。でも、どっちみち修平は入れさせてはくれないだろうな」 「本当にそんな風に思っているのか?」 航が悲しそうな顔をしてて胸が更に痛くなった。 友達にまで裏腹なことを言って俺は何をやっているんだろうって思う。 本当はそんなこと、これっぽっちも思ってなかったのに。 「ごめん。もうこの話は終わりだ!」 これ以上航と言い合っても辛くなるだけだと思い自分で幕をひけば、航は複雑そうな顔をしていたけど頷いて、今度は力なく笑いながら立ち上がりキッチンへ向かう。 「千秋に風邪が一発で治るもの作ってやるよ」 「なにそれ」 「ばあちゃん直伝なんだが、これがよく効くから。明日には元気になってるぞ」 「ばあちゃんの知恵袋ってやつか?」 「そんなやつだ」 そう言ってニッと笑うと、航は冷蔵庫やらシンクの下を開けたり閉めたりしながら鍋を片手にガチャガチャと混ぜ合わせ何かを作り始めた。そして出来上がったそれをマグカップに注ぐと俺の目の前に出す。 「ばあちゃんの特効薬だ。温まるぞ」 「ありがとう」 なんだこの黄色いの。 どんなものだろうと思いながら匂いを嗅いでみると不思議な匂いがした。 「どんな味?」 「砂糖が入ってるから甘い味」 砂糖が入ってて甘い特効薬なら……と思ってゴクゴクッと勢いよく飲んでみる。 「うげー、まずー……なんだこれ」 「まずいか? ちょっと貸してみ……って、なんだよ。旨いじゃん」 航は作り方を間違えたかもと心配になったのか自分でも飲んでみると、これを旨いと言いやがった。 「お前、舌がおかしい」 「うちの家族はみんな喜んで飲むけどな」 「つか、これなんだよ」 「何って玉子酒。ばあちゃんが風邪にはコレって、よく作ってくれたんだ」 「たまござけ? 初めて飲んだ……」 「体が温まって早く治るってばあちゃんは言ってたぞ」 「本当かよ……つか、なんか逆にクラクラするんだけど」 ん……? 待てよ? たまござけ……玉子酒…………酒!? なんとなく甘かったから気付くのが遅れたけど、玉子酒って酒なんじゃん。 「……俺、酒……弱いんだって……」 「えっ? だからアルコールはだいぶ飛ばしたはずだぞ?」 航に言ってる最中に視界がグラグラと揺れるような感じになり気持ち悪くなる。 風邪と酒とか最悪の組み合わせなんじゃねーの? 目が霞んでくると、ぼーっとして航が何か言ってるようだけどだんだん聞こえにくくなる。 そうしているうちに、波が引くように意識が遠のいていった……。

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