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28.長いながい一日 11

高校の頃、別れようって修平に言われて、俺の電話番号やらSNSのアカウントなど全ての情報を目の前で消されたことがあった。 辛くてムカついた俺は、その後すぐに俺だって消去してやるって、修平の電話番号を表示させたけど消去できずに、それから何度も表示させては消去できないを繰り返しているうちに……覚えてしまっていた。 覚えてるなんてなんか恥ずかしいから修平には言ってないけど、こんなとこで役に立つとは我ながら偉いと思う。 電話番号を押し終えると、コール音が響いた。 公衆電話だから出ないかな。 ……出て欲しいな。 ……お前の声、聞きたい。 意識は朦朧としてくる。風邪だからか、酒のせいか、寒さのせいか、もうよくわかんねぇし。 どうでもいい。 謝りたい。伝えたい。 悪かった、って。 好きだ、って。 ただ、今は修平の声が聞きたくて、響くコール音が長く感じて、心臓が耳元で鳴ってるんじゃないかってくらいにドキドキした。 すると……、電話が繋がった。 『……もしもし?』 修平の声が聞こえた瞬間、家出してからまだ1日も経ってないはずなのに懐かしくて、嬉しくて少し泣きそうになった。すぐに返事しようとしたけど、こみ上げるものがあって直ぐには声が出せなくてゆっくりと息を吸い込む。 『もしもし?』 その間にも不審そうな修平の声が耳に届いていた。 俺は胸に占める気持ちと一緒に絞り出すように声を出した。 「……………………修平」 『ち、千秋か!? い、今どこ!? どこにいるんだよ!?』 やっと修平の名前だけ声に出せば、修平は途端に俺だと気付き、珍しく焦ったような口調で矢継ぎ早に聞いてきた。 「修平、……ごめんな」 『今どこ!? どこにいるの!?』 「……どっかの公園」 喋るもの辛くてそう答えると、また焦る声が響く。 『どこの公園!?』 「わかんない。走ってて……迷った」 『周りを見回してみて、なんでもいいから』 見回してみると、公園の遊具の近くに“みんな なかよし あおばこうえん”と書かれた柱がたっていることに気付いた。 「みんななかよしあおばこうえん? って柱に書いてある」 『わかった』 柱に書いてあることをそのまま読んで居場所は伝えられたけど、俺の意識はどんどん遠のいていく感じがあって気持ち悪い。 「……もう無理かも。……死ぬ、かも……」 『何言ってんだよ。とにかく行くからそこにいて』 電話ボックスの壁にもたれながら、修平の声を聞いていたら何だかわからないけど涙が溢れてきた。 なんでだろ。 また、これが夢だったりしたら最悪だな。 会いたい。会いたい。会いたい。 修平に会いたい。 「…………………修平、会いたい」 そう絞り出した言葉の後には、さっきまでのやや焦った声ではなく、いつもの優しい修平の声が聞こえてきた。 『すぐに行くからね』 その優しい声は、いつまでも耳に残っていた。

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