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28.長いながい一日 13

だからこそ、俺はすがる様に修平に抱きついてぎゅっと力をこめた。 そうしていると今まで溜め込んでいた感情や言葉がポロポロとこぼれ落ちてくる。 「修平……俺、修平が好きなんだ。大好きすぎるくらい。でも、変な話だけど好きすぎて不安で……俺、何も出来ないから。頭も良くないし修平の助けにもなれない自分が嫌で、それで……」 次第に涙が滲んできてしまって少し詰まりながら話していると、修平の抱きしめる力も少しだけ強くなった。 そしてあやすように俺の背中を優しく摩りながら耳元で優しい声が響く。 「今は体を休めて。千秋の体、凄く熱いから。熱がある」 「修平、許してくれる?」 「許すも許さないも、怒ってなんかないよ」 そう言うと修平が抱きしめる手を緩めたので、咄嗟にに引っ付き力をこめて修平の腕を掴んだ。 「ど、どこいくの!? どこにも行くなよ!」 すると修平がクスクス笑って俺の頭にそっとキスを落とす。 「違うよ、一緒に帰るんだよ」 修平は着ていた上着を脱いで俺の背中を覆うようにかけると、背を向けてしゃがんだ。 「帰ろう。背中に乗って」 「あ、歩けるよ……」 「歩けないだろ? おぶってあげるから、ほら」 そして手を引かれるまま俺は背負われて2人の部屋へと帰っていく。 さっきまで降り続いていた雪はいつの間にか止んでいた。 でも雪は地面のコンクリートが見えなくなるくらい積もっていて、まだ柔らかい雪を踏みしめる修平の足音が静かに響く。 「修平……寒くねぇ? 上着、俺が着てるから」 「千秋がひっついてくれてるから寒くないよ」 「でも……」 「大丈夫だよ」 修平の上着は暖かくて修平の匂いがしてすごく落ち着く。それに加えて修平の優しい声が擽ったくて首筋に顔を埋めるとまた修平の匂いがして、たまらなくなって更にぎゅーっとひっついた。 「修平……好き」 「熱のせい? なんか素直だね」 笑いながら軽く振り向く修平を見て俺は不思議でたまらなかった。 どうして修平は怒らないんだろう。 絶対、俺が修平の立場だったらめちゃくちゃ怒りまくってるはずだ。 「なんで、修平は怒らねぇの?」 そう俺が尋ねると。 「んー? 千秋が好きだからかな」 しれっと言う修平にさすがに照れてしまって、また顔を埋めると修平の笑い声が耳に届いた。 無駄に顔が熱くなるし。ただですら熱があるのにまた上がるじゃん。 修平ってば、やっぱりバカだ……。 なんて心の中で悪態付くのが精一杯で、そのまま黙っているうちにマンションへと帰ってきた。

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