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28.長いながい一日 14
帰ってくると修平は俺をおぶったまま俺の靴を脱がせて、そのまま自分らの部屋へと向かう。
そしてチェストから新しい部屋着を取り出すと、ようやく俺のことを下ろした。
「とりあえず、部屋着だけ着替えようか。着替えられる?」
「うん、大丈夫」
部屋着を着替えてベッドに寝かされた時に時計を見ると、夜の7時を過ぎたところだった。
今日は時間の感覚があまりなかったからもうとっくに日付が変わってしまっている気がしていたけど、まだ今日が数時間残っていたことを知りホッとする。
そんなことを考えていると、修平が立ち上がろうとしたので咄嗟に手を取って止めた。
「ど、どこ行くんだ?」
「暖かい飲み物を持ってこようと思っただけだよ」
「……いらない」
「寒かっただろ? 暖めないと風邪が悪化する」
「いらないから、ここにいろよ」
必死になってすがりついていると、修平は目を細め俺の頭をひと撫でした。
「すぐに出来るから。それを千秋が飲んでくれたら、ずっとここにいる」
修平はそう言って部屋を出て行くと、すぐに生姜湯をもって戻ってきた。
「これ飲んで」
その生姜湯は体に染み渡るようで体の芯からホカホカしてくるような気がした。
「飲み終わったら少し眠ると良いよ」
「……でも」
また修平がどっか行きそうな気がして不安になったから、引き止めるように視線を上げると修平はにっこりと微笑んだ。
「どこにも行かない。ここにいるよ」
心が読まれたのかと思った。
でも修平がどこにも行かないと耳元で言ってくれたから、安心して横になる。
でも、もう1個だけ……。
ごそごそと布団の中から手を出して修平の袖を引っ張った。
「ん?」
面と向かって言うのは、やっぱちょっと恥ずかしいから顔は枕に押し付けたまま小さく呟く。
「手……握ってて」
小さな声になっちゃったけど、その微かな声は修平の耳にもちゃんと届いたのだろう。
そっと握ってくれた手はやっぱり暖かくてスーッと瞼が閉じていったんだ。
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