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29.俺たちの約束 2
だから更に速く歯ブラシを動かしていると、修平はクスクスと笑いながら首筋にそっとキスを落として、食事の用意をするからとキッチンに戻っていった。
な、何をしに来たんだ! いったい!
やばい。修平が無駄に甘い……。
無性に照れくさくてたまらなくて歯は磨き終わったけど直ぐにリビングに行きたくなかったから、昨日掻いた汗が気持ち悪かったしシャワーを浴びてからリビングに行くことにした。
*
そしてシャワーを浴びてからリビングに行くと、リビングにはとても良い匂いが漂っていて、俺に気づいた修平がソファに座って手招きする。そして俺を座らせると、ドライヤーを手にした。
どうやら髪を乾かしてくれるらしい。
「今日はなんか至れり尽くせりじゃないか?」
「千秋の誕生日だからね」
そういって修平は楽しそうに俺の髪を乾かし、乾いた俺のつむじにキスを落とすと「いい匂い」と言って満足そうにまたキッチンへ戻っていった。
今日はいつも以上に至れり尽くせりなわけだが、やっぱり甘い修平の態度に勝手にドキドキしてしまう。気を落ち着かせるように視線をローテーブルの上に落とすと、そこには昨日忘れていった自分のスマホが置かれていた。
「そういえば、昨日忘れていったんだっけ」
スマホは充電が無くなって電源が落ちていたので、充電器に差し込み電源を入れると……途端に不在着信の知らせとメッセージが大量に届いた。
「うわっ、多ッ!」
不在着信は大学の友達が数人、それに咲良と樹からもあった。
なんでこんなに多いんだろって思いながらメッセージを見ていくと、それは不在着信とほぼ同じメンバーからで、その内容が全て『どこにいる?』と俺の所在を問うものばかりだった。
『新藤ってやつが大学に来たぞ』
『柏木の友達ってやつが探してたけど今、どこにいんの?』
『修平さんから電話あったけどお兄ちゃん何かあったの?』
『兄貴がどこにいるか聞けって』
『俺のバイト先にカッシーの友達ってやつ来たんだけど』
『柏木、行方不明ってマジか?』
メッセージを読んで、俺がいない間修平が俺を探してくれていたことがわかって、胸がいっぱいになった。
航がバイト先に探しにきたって教えてくれてそれだけでも嬉しかったけど、こうやって探し回ってくれてたんだってわかって変な話だけど嬉しくて……。
思わずキッチンに飛んでいって後ろから修平に抱きついてしまった。
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