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29.俺たちの約束 3

俺がいきなり抱きついたから修平は少し驚いたようだった。 「……わっ、びっくりした」 そう笑いながら振り返る修平にちょっと背伸びして唇に触れるだけのキスをする。 「修平が好き。マジで大好き!」 俺がしがみ付くと修平は目を細め、体ごと俺の方に振り返ってシンクにもたれながら、俺を足の間に入れるようにして抱きしめた。 コトコトと何か煮込むような心地よい音の中で修平は呟くように言う。 「なんか僕が誕生日みたいな気分だな。嬉しい」 「な、何言ってんだよ」 子供のように笑った修平にドキッとして俯く俺を修平が覗き込んだ。 「どうしたの?」 「……俺のこと探してたって、友達とかが言ってた。……探してくれて、ありがと……」 胸に顔を埋めながら言うと耳元で修平がクスリと笑うのがわかった。 「僕はもう絶対に千秋を諦めたりしない。これから先も、何があっても千秋を探すよ」 ポンポンと頭を撫でられたから顔を上げると修平が笑っていて、それがいつも以上に格好良く見えて、俺は自分の顔が熱くなっていくのを感じていた。それと同時に沸き起こる気持ちも大きくなっていく。 「俺、料理も洗濯も今より出来るように頑張るから。修平に頼りすぎないように頑張るから」 すると修平はまた目を細めると少し寂しそうに微笑んだ。 「それは逆に僕だけを頼っていてほしい気がするけど。むしろ僕がいないと何も出来ないくらいになって欲しいくらいだよ」 そう言って笑ったんだ。 「そんなのお荷物みたいじゃないか」 「まぁ……そんな妄想だってするんだよ、僕だって。さ、料理が出来たから食べようか」 俺が首を傾げていると、修平は笑いながらローテーブルの方に料理を並べていく。 「本当は今日もお粥が良いんだけどね。千秋の誕生日だし、出来るだけ消化の良いものを考えて作ったから。食べられる分だけ食べて」 目の前に並べられているのは、豆腐ハンバーグ、リゾット、かぶのミルクスープに温野菜サラダとデザートの果物。 そしていつもより小さめのバースデーケーキだった。 「ケーキは消化に悪いけど、誕生日にこれがないとね」 そう修平は言ったけど、いろいろ考えてくれたことにめちゃくちゃ感動してしまって料理のほとんど平らげてしまった。 「あまり一気に食べると良くない」って修平は心配していたけど、修平の作ってくれたものはどれも美味しくて、ひとくち食べるたびにどんどん元気になるような気がした。

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