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29.俺たちの約束 7
そして修平に抱きしめられながら、修平のシャツをぎゅっと掴んだ。
「俺もごめん」
そう言うと修平が更に俺を抱きしめる腕に力を入れる。
俺、愛されているんだって実感することが昨日からやけに多いな。
それはすごく嬉しいことで、幸せでくすぐったい感覚で、余計に顔が熱くなったから俺も修平を抱きしめ返した。するとどんどん心から湧き上がる感情で胸がいっぱいになっていく。
もー、好き好き好き! すげー好き!
なんて思いながら力を込めてみたりなんかして。 すると修平の声が耳元で響いた。
「好きだよ……千秋が大好き」
修平の声が脳内に直接響いて凄くドキドキする。同じことを考えていたのも嬉しい。
すると修平が言ったんだ。
「ねぇ、千秋も言って。僕のことが好きって」
「………………す、好き。修平、好き」
素直に言うと修平がクスクスと笑ったのがわかり、俺の体をゆっくりと離した。
目の前にいる修平は本当に柔らかく微笑んで俺のことを見ている。
俺は絶対に顔が赤いから俯きたいけど、修平の手が頬に触れたから不意に目線をあげた。
そんな時、その優しい声が響いた。
「千秋。…───僕と、結婚してくれる?」
……え?
今、なんて? ……結婚?
驚いた顔をしたまま固まっている俺の頬を撫でると、修平はポケットから小さい箱を取り出して蓋を開きもう一度言った。
「僕と結婚して。大切にする、幸せにする。僕の幸せには、千秋が必要なんだ」
染み渡る声に呆然としていた。
その箱には俺が前に修平に贈ったペアリングと同じものが入っていて。
「えっ……だって卒業……って、え?」
「学生結婚ってことになるね」
「い、いや……そうじゃなく……て、えぇ?」
修平は俺の手を握ると目を細めた。
「大学卒業したらって言ってたけど、色々すれ違ったりしたろ? 千秋を不安にさせてしまったって反省したんだ。そのとき思った。これからもずっと一緒にいるなら、卒業後でも今でも同じだと思ったんだ」
「でも、それって俺が不安がるからしょうがなくって意味なんじゃ……」
そう言ったところで修平が言葉を発し、俺を遮った。
「僕だって不安だよ」
「え?」
「僕だっていつか千秋が離れていってしまうんじゃないかって不安だから、そうならないように毎日必死になってる」
「そ、そんな……」
「千秋も言ってたけど、男同士だから何の保証もない。子供だって出来ないし世間的にもね……わかってるよ。でも、一緒に……、千秋と一緒にいたいんだよ」
そして修平は俺を見つめながら優しく微笑んだ。
「だから例え正式な結婚が出来なくとも、証が欲しい。千秋と一緒に生きていく証が欲しいんだ」
修平はわざと軽く笑いながら「僕って我が儘だろ?」って付け加えるように言ったけど、修平の言葉が胸にズシンと突き刺さるようで、気が付いたら涙が頬を伝っていた。
───…そして、初めて知ったんだ。
嬉し涙ってこんなに温かいものなんだってことを。
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