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29.俺たちの約束 13
すると修平は胸に顔を埋めたままの俺の頭を優しく撫でた。
「千秋……」
「ん?」
まだ恥ずかしかったけど、修平が俺のことを呼ぶから返事をすると、耳元で「大好き」と囁かれる。
「俺も、すげー好きだし」
そう言いながら修平のシャツをぎゅっと握ってそっと視線をあげると、修平は目を細めて俺の髪を撫で、落ち着きながらも、やや緊張したような声でそっと呟くように言った。
「……そろそろ返事を聞かせて欲しいんだけどな」
「え? 返事って?」
思わず聞き返すと、修平はちょっと困ったように笑って続ける。
「プロポーズの返事。僕と結婚してくれる?」
改めて聞かれてちょっと笑ってしまった。俺の中ではそれ以外の返事なんてなかったし、とっくに答えた気分だったから。
「……そんなの、決まってるじゃん。つか、忘れんなよ! 最初に結婚しようって言ったの俺だからな!」
すると修平も「そうだったね」って言いながらつられて笑っていた。
*
そして、部屋が夕焼け色に包まれ始めたころ。
2人だけの結婚式をした。
いつも俺たちがいる、俺たちの部屋。日常の空間で誓い合うことが俺たちにとってはとても自然だと思えた。
修平が誓いの言葉とか言い出して、俺にも言えとか言うから本当は恥ずかしかったけど、俺も言えば修平が微笑んでそれを見ていて、その嬉しそうな顔を見ていると俺も幸せな気分になる。
俺も修平と同じ気持ちだ。俺だって修平を幸せにしたいし、大切にする。俺の幸せにも修平が必要だ。
派手な式なんかいらない。誰かに披露して祝われたいわけでもない。
男だからそんなに結婚式って形式にはこだわらないし、そんなのはどうでもいい。
ただ、修平がいて。俺がいて。
誓い合い、指輪を交換しあって誓いのキスをすれば、不思議と胸がいっぱいになり俺たちには十分な証に思えた。
そして俺は、
健やかなるときも、病めるときも
喜びのときも、悲しみのときも
富めるときも、貧しいときも
修平を愛し、敬い、慰め、助け
その命のある限り、真心を尽くすことを誓った…───。
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