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29.俺たちの約束 14
左手の薬指に修平がくれた指輪をするだけで、結婚って実感して嬉しくてたまらない。
指輪の内側にはいつか言っていたように、“S to C”と彫ってあった。
修平が覚えていてくれたことも嬉しくて何度も指輪を見てしまう。
つか乙女かっ! って心の中で突っ込んだけど嬉しいものは嬉しいんだ。
たったこれだけのことなのに、本当に不思議なんだけど。
出会った頃は大嫌いでこんなにも修平のことを好きになるなんて思いもしなかったし、こんなに大事な相手になるなんて思わなかった。
そうしていると修平と付き合ってからの出来事が次々に思い出されていく。
いろんな初めてを修平と過ごした。
強引だったり突拍子もないことをしでかされたこともあったし、笑ったことも泣いたこともたくさんあったけど。
嬉しいことも、怒ったことも、悲しかったことも、楽しかったことも……全部、修平のせいで良かったと思う。
修平も同じだったらいいな。そんなことを思いながらこれからも2人で生きていくんだって思ったら、今まで以上に好きって気持ちが俺の中で大きくなっていくような気がした。
「本当に結婚したんだな」
「不安なら役所に行って婚姻届貰ってくるから、書いて保存しとく?」
「………うん。……しとく」
俺は記念になっていいなと思ったから素直に返事したんだけど、修平にしてみれば予想外だったみたいで何故か笑われた。
「な、なんだよ!? へ、変?」
「変なんかじゃないよ。嬉しかっただけ」
そう言って修平が目を細めれば見惚れるくらい格好良く思えて、急に心臓がバクバクと音を立て、無性にくっつきたくなってしまった。
普段ならしないけど、今日は結婚記念だから特別だ。と、ソファーに座る修平に跨るようにして抱きついてみる。
「どうしたの?」
「べ、別に抱き付くくらい良いだろ! 結婚記念だ」
「千秋なら大歓迎だけどね」
なんか変だ。好きすぎておかしくなりそうなくらい。
気持ちが爆発しそう。
「修平、こ……これからも宜しく」
「こちらこそ」
なんかさっきから心臓がずっと速く動いていて、それを気付かれないように冷静になろうとしても修平の優しい声が耳に届くだけで、今度は無性にキスしたくなる。 これも結婚したって実感から起こるものなのだろうか。
「修平、こっち向いて……」
「ん?」
修平と目が合わさった瞬間、頭ごとぎゅっと引き寄せた。
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