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30.それは宝物 11
え? これって良い? 悪いの?
こういう証人とか印鑑とか簡単に押しちゃだめって言われない?
もし、これが何かの詐欺だったらどうすんだよ。
って、これは詐欺じゃないからいいんだけど余計なことまで心配になるんだけど。
そんな心配を勝手にしていると、姉ちゃんが俺の肩を軽く叩きながらクスクスと笑った。
「政宗はね、素直なの」
すると嬉しそうな顔をしてマサさんが振り向く。
「瑞希の大切な人なら僕にとってもそうだし、瑞希が言うなら間違いないよ」
すると姉ちゃんは目を細めながらマサさんのことを見ていた。
「でも私がいないところで印鑑とか押しちゃだめよ」
「わかってる」
……なんていうか。
2人を見ててなんとなく浮かんだ言葉を、これ言っていいのかなと思ってたら修平がボソッと呟いた。
「相変わらすのバカップル……」
そんな修平の呟きが姉ちゃんには聞こえてなくて本当に良かったと思いつつ、何はともあれマサさんのお陰で晴れて婚姻届が出来上がり、そうしているうちにレストランの予約時間が近付いてきた。
───…
レストランでは和やかに食事をして、俺以外はワインなんかも飲んだりしてて、大学のことやこれからの就活のこととか色々と話せて本当にためになったし楽しかった。
そして食事会が終わると、姉ちゃんたちがタクシーでさっきのホテルに帰っていくのを2人で見送る。
そして俺たちも自分たちのマンションへと戻ってきた。
帰ってすぐに着替えようと部屋に向かうも、一気に気が抜けてベッドに倒れこむように横になる。
「疲れた?」
「うーん、気が抜けた」
修平はクスクスと笑うと、鞄の中から婚姻届を取り出して俺の隣に寝転んだ。
そして修平が寝転がりながら婚姻届を見ているので俺も一緒になって眺めながら、完成したんだなぁってしみじみ思っていると修平が嬉しそうに笑う。
「姉貴たちのおかげで、完成したね」
「あぁ、姉ちゃんたちにはめちゃくちゃ感謝してる」
すると修平がこっちを向いて俺に腕枕をすると優しい目で微笑んだ。
「僕ね、千秋が姉貴にハッキリと言ってくれたこと。すごく嬉しかったよ」
「え?」
「愛してるから結婚したんだってやつ」
そう言われて自分が思わず放った言葉を思い出して、急激に顔が熱くなっていく。
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